2005-11-02日本美術そうだったのか通信
Vol.67 京都にて・棟方志功

□■□■  「日本美術そうだったのか通信」 Vol.67
発行 有限会社アートオフィスJC・秋華洞
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<本マガジンの説明>
日本美術の鑑賞界のホットニュース、古今国内東西の作家のエピソード、美術業界
裏話など、日本美術をより楽しむための情報をお届けします。
アートオフィスJC・秋華洞提供。
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もくじ
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・あいさつ
・作品紹介「棟方志功」
・懸賞のお知らせ
・社員募集
・おまけコラム(美術館、文化祭、展覧会)
・おまけのおまけコラム(白洲正子)
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お元気ですか。

アートオフィスJC・秋華洞 田中千秋です。

先週は発行をサボりまして大変失礼いたしました。

実は、先週は二度ほど偏頭痛の一種(閃光暗転といいます)に襲われまして、時
間をとれないまま今週に至ってしまいました。

閃光暗転、というのは、妙な症状でありまして、突然、視界の中心が見えにくく
なって、しだいに頭痛などの症状が出てくる、というものなのですが、この現象
は実は芥川龍之介の「歯車」という小説に出てまいります。

命に別状はないものの、いささかツライ病気でして、半日くらい何も出来なくなっ
てしまうのがクヤシイところです。

でも100人に一人くらいはかかる、と医学の本に書いてあるのを読んだことがあ
ります。案外多いのですよね。もしあなたもこの症状があるなら「偏頭痛友の会」
一緒に作りませんか?

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実は今京都に来ています。京都で古書画の大きな業者市が開かれるため、のぞき
に来たのですが、この地は古書画の「本場」、といってもいいかもしれません。
私は東京の活動が多いため、ごく一部しか知りませんが、非常にさまざまな種類
の骨董市が開かれているようです。

京都の街角には古書画、骨董の店をよく見かけますよね。そのせいかどうか、
関西は古書画・骨董の取引量もとても多いのです。

京都は、応挙や若冲から竹内栖鳳など上品な芸術を生み出したのは勿論、日本
国の首府としての歴史は東よりも長く、やすやすと文化の中心地を「東」には譲
らないというプライドもあるかもしれませんし、そもそも品物も多いという実情
もあるのかもしれません。

話は脱線しますが、横山大観・川合玉堂が代表する東京画壇はいくぶん「無骨」
「直球」のイメージがある一方で、竹内栖鳳・上村松園などの京都画壇は「上品」
「洒脱」な感じがしますね。ダサくてもいい、たくましく育てばいい東京と、も
ののわかったオトナの京都文化。(かなり大雑把なハナシですので、話半分に聞
いてください。)私はどちらも捨てがたいなあ。あなたはどちらがお好みでしょ
う。

ちなみにこと商売人に関してはイメージが逆です。よくも悪くも上品な東京。
ちとエゲツナイ関西。この現象はどのように説明できるのでしょう。(ちょっと
怒られるかな>関西の方 笑って許して(^^ゞ )

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今週の作品紹介
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■棟方志功『天大界』
http://www.syukado.jp/jp/search/detail/type/fude/A05-1079.html

土俗的、官能的でありながら聖なるイメージをたたえる女性像版画(板画、と棟
方は呼んでいます)で知られる棟方ですが、秋華洞で取り上げる最初の作品は
「書」です。変化球気味かもしれませんが、でも、どうですか、この作品。

どかん、と直球。

棟方の精神の中核になるのは、「エロス」と「宗教」だと思います。

私が好きなエピソードは、棟方が青雲の希望を抱いて青森から東京に出てきて、
洋行帰りの大家・中村不折の家を訪ね、門前払いになったときに、しょんぼりと
訪れた中村宅に併設された美術館(当時は倉庫?)にあった石の裸婦像を見て涙
を流し、お母さん、自分は必ず画家として成功する、と誓った、というものです。

参考リンク:
当店「中村不折の作品一覧」
http://www.syukado.jp/jp/search/item/artist/jp_b/NAKAMURA_FUSETSU.html
書道博物館(中村不折創館)
http://www.taitocity.net/taito/shodou/

この像の写真は棟方の画集(集英社)で見ることができますが、官能的な美しい
石像です。棟方の、あのはなやかで大らかな女性像を生み出した源が「母性」で
あったことは想像に難くありません。

一方で、27歳で結婚した棟方の制作意欲は、妻チヤに触発されたところが少な
くないようです。

男性の誰もが経験するように、母性=エロス=異性に対する憧れのイメージが、
「母」から「女(妻)」に変遷をたどり、その「エロス」へのあくなき<賞賛>
が、宇宙を自由闊達に踊りまくるような棟方の女性像として結晶しているように
思います。

一方で、棟方の「宗教観」。特定の宗教を信仰した、ということはないようです
が、彼はごく自然に仏教的宇宙観を受け入れていたようです。

最初に中村不折への入門を断られた棟方ですが、結局終生「師」を取ることはし
ませんでした。師につくと、師の枠にはめられて、師を越えられなくなる、と彼
は判断したのです。

むしろ、彼の師があるとすれば、仏教的世界観を背景とする「宇宙」であったで
しょう。伝統的アカデミズムに触れた芸術が、どうしても「○○流」「××派」
のつまみ食い、複合で「おさまって」しまいがちなのに対して、棟方のそれは、
宇宙そのものにインスピレーションを得た、言っていいでしょう。棟方自身が、
そのようにハッキリ意識していたようです。

実際、ド近眼のまなこを板にすりつけるようにして製作を行う棟方の映像を見る
と、あの姿は絵を彫っている、というよりも、何か一種の呪術的な儀式を行って
いるかのように見えます。

目が「見えない」ことが宇宙を「見える」ようにしているのかもしれません。

さて、本作。

『天大界』。

これはどのようにして書いたのでしょう。あくまで野太い、大きな大きな書です。
顔をあんまりすりつけては書けないでしょうが、でもやっぱり紙に顔をぐいっと
張り出して、墨が顔につかんばかり、全体のバランスは「勘」で補いながら書い
たのでしょうか。

自身の芸術を生み出す背景にある巨きな世界。その世界を筆先に感じながら、こ
の作品をブシュッと一気に書き上げた。そんな風に想像致します。

参考リンク:
棟方志功記念館
http://www.lantecweb.net/shikokan/
日本民藝館・棟方志功
http://www.mingeikan.or.jp/Pages/munakata.html

棟方志功『天大界』
紙本に墨・軸装
本紙69.3×136 cm 総丈217×86.8 cm
落款・印・棟方巴里爾箱書
http://www.syukado.jp/jp/search/detail/type/fude/A05-1079.html

作品は一点限りです。お問い合わせ・ご用命はお早めにお願い致します。品
切れの際はご容赦くださいませ。

作品は、東京・銀座六丁目、電通通り沿いの、弊社アートオフィスJC画廊で
御覧になれます。また、スタッフ出張により御覧いただくことも出来ますので
ご遠慮なくお申し付け下さい。

<弊社開廊時間>
平日、土曜 10:00-18:00
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※平日にお越しの方には、当店自慢の美人社員・イケメン社員(当社比)が
お茶をお入れします!

弊社案内図
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☆☆☆☆☆☆☆
おまけコラム

今回はイベント情報的に。

(1)海の見える杜美術館(広島県)
参考リンク:
海の見える杜美術館
http://www.umam.jp/
オールアバウト日本画:海の見える杜美術館
http://allabout.co.jp/entertainment/japanesepaint/closeup/CU20050907A/

最近、「王舍城美術寳物館」という名前から「海の見える杜美術館」として生
まれ変わり、リニューアルオープンしたこの美術館。

この美術館は京都を代表する日本画家・竹内栖鳳のコレクションでは日本屈指の
ものを誇りますが、厳島神社をのぞむロケーションでも最高の場所にあります。
たんに「文化的な場」ということ以上に、<贅沢な時間>を体験する場所、とし
ての変革を先端的に行っている美術館だと聞きます。

ワタクシまだ伺ったことがないのですが、早いうちに行きたいと思っています。
行かれた方は感想などお寄せくださいませ。

(2)思文閣大文化祭・京都
http://www.shibunkaku.co.jp/bunkasai/
ワタクシの親戚美術商ですので、ちょっと宣伝しちゃいます。

明日11/3から6日まで、京都・思文閣本社など数会場を舞台として、「文化
祭」が開かれます。入札会、鑑定会、「なんでも鑑定団」出演の二人などの講演
会と盛りだくさんの内容。

今朝の京都新聞を広げて、一面広告がドカーンと載っているのには驚きました。
そのぐらいの意気込みでやっているこの文化祭。関西方面の方はのぞいてみては
如何でしょう。

(3)『書の至宝』展・東京国立博物館(2006年1月より)
http://www.asahi.com/sho/
時空を超えて、書の超々一級品が一同に会する空前絶後のこの展覧会。
準備は着々と進んでいるようです。

日中というのは近年揉め事が非常に多いのですが、思えば「漢字」という共通の
文化を持つこのふたつの国。近いからこそ、「近親憎悪」の要素もあるのでしょ
うが、文化的・経済的なつながりは、疑いなく、深いものがあります。

昔は、小さくは、隣町、隣村の子供同士で喧嘩を吹っかけたりしたものらしいで
すし、大きく日本国内でも応仁の乱以来の群雄割拠、隣の地域と戦う時代があり
ましたが、大人になるにつれ、あるいは歴史を経るにつれ、対立した痕跡もなく
なっていくように、隣国との争いも、何世紀かを経て成熟していくもの、と考え
たいところです。

そうした歴史の一コマとして、今回のこの展覧会も位置づけられるかもしれませ
ん。

日中お互いの国の「門外不出」の国宝、重要文化財たる「書」が東京・上海を行
き来するこの展覧会、是非成功してほしいものです。

☆☆☆☆☆
おまけのおまけコラム・白洲正子

先日、ある業者オークションである名家宛ての手紙が大量に出品されました。他
の有名人はそこそこの値段ですが、白洲正子氏の手紙の人気の高いことと来たら!
すさまじい勢いで競りあがっていきました。このメルマガでも、彼女のことに触
れると、必ず反響があります。静かな大ブーム、というところでしょうか。

時代に求められるところが大きいのかもしれませんね。ちょっとスローだけど本
物の暮らし、虚飾のない、本質的な心の安らぎや豊かさを求める時代。(なんか
言葉にすると陳腐かな)。

単に目利き云々、ということだけでなく、生き方の参考になりそうな気がすると
ころが人気の秘密でしょうか。

ところで、よりよく生きる、とはどのようなことでありましょうか。昨日松嶋奈
々子主演の「火垂るの墓」もみて、考え込んでしまいます…。

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