2005-10-22日本美術そうだったのか通信
Vol.66 横山大観・会長ズッコケ

□■□■  「日本美術そうだったのか通信」 Vol.66
発行 有限会社アートオフィスJC・秋華洞
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<本マガジンの説明>
日本美術の鑑賞界のホットニュース、古今国内東西の作家のエピソード、美術業界
裏話など、日本美術をより楽しむための情報をお届けします。
アートオフィスJC・秋華洞提供。
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もくじ
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・あいさつ
・作品紹介「横山大観」
・懸賞のお知らせ
・社員募集
・イヤマの今週のステキさん
・おまけコラム
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こんにちは。

アートオフィスJC・秋華洞の田中千秋です。

あなたは風邪など召していませんか。

弊社内では、アルバイトの大谷君、パートの近藤さん、と順番に風邪でお休み。
ちょっと流行りつつあるのかな。僕も咳が時々出るようになってしまいました。

私の下の娘(5歳)も、ひいてしまったらしく、ただでさえ喘息で夜中に発
作が時折出るうえに、風邪までひいてヒイヒイグシュグシュゴホゴホいって
おり、ちょっと心配ではあります。

ただ、この子供は、病気に苛められているせいか、気が強く、ちっとやそっと
叱っても怪我しても泣かない癖に、トランプなどの「勝負」で負けるとヒーヒー
泣いて悔しがるのですね。そしてオトボケのキャラクター。ニンゲンにかかる
「負荷」と神様?からの「プレゼント」は同量、なのかも知れません。

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今週の作品紹介
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今回は一作品のみ。

■横山大観『霊峰不二』(よこやまたいかん・れいほうふじ)
http://www.syukado.jp/jp/search/detail/type/kake/A05-1074.html

真打中の真打の登場であります。

横山大観。

近代日本美術の「父」=岡倉天心のリードのもとスタートしたものの、不遇
と貧苦の中、一度は崖っぷちの際まで追いつめられた「日本美術院」を、見
事復興し、現代の「院展」に続く近代日本画の奔流を作る中心となった不屈
の巨人です。

明治以降の「日本画」、というものが、この人なくしては無かった、と断言
できるその気迫で、80を超える高齢まで殆ど筆力の衰えることなく気魂の籠
もる作品を生みだし続けました。

この島国の『絵』の伝統は、二度の危機に脅かされます。一度目は、明治維
新。そして二度目は、太平洋戦争の敗戦。

明治維新のときは、鎖国していた日本から、急に西洋の文物が入ってくるよ
うになることによって起きた日本の絵の危機。(このとき「日本画」という
言葉が生まれました。)平面的な日本画は、陰影と立体感を持つ油彩画に比
べて、退屈で因襲的、という烙印をおされかけたようです。

そして、第二次大戦の敗戦後は、日本人が自らの国体に自信を失ったことも
影響したのでしょう、日本画は不要、とする論調の中「日本画滅亡論」さえ
唱えられ、日本画から洋画に転向する者が後を絶ちませんでした。

この明治と昭和、この二度の「危機」に、敢然と立ち向かったのが、横山大
観その人でありました。

明治の時代は、世間の無理解・不遇にあえぎながらも、洋画の良さを取り入
れた、新しい「日本画」を創造する試みに菱田春草ら初期美術院の仲間たち
と共に没頭し、とうとうその流れを確固たる地位におしあげます。

昭和の時代、後に国粋主義者とレッテルを貼られる程「日本男児」の気骨を
重んじた大観は、軍国主義の後押しをしたとの疑いで敗戦後に戦犯の被疑者
にさえなりますが、そうした状況にも屈せず、「日本」の精神を描き続けま
す。

「日本」とは何か。「日本男児」の気骨とは何か。

それは、大観にとって、「富士」の山でした。「不二」と書いて、富士と読
ませます。かけがえのない、ひとつかぎりのもの。美しく、ゆるぎないもの。

ですから、描いても、描いても、描き足りない、飽くことのない、画題であ
りました。

それは「自分」の<誇り>の投影でもあり、「自分たち」=「美術」/「日
本」の<誇り>投影でもあったことでしょう。

古くは葛飾北斎、近くは、川合玉堂も、川端龍子、現代は云うに及ばず、他
の作家も「富士山」を描いていますが、あの「山」の意味するところは全く
違います。

大観の描く「不二」は理想の世界そのものであって、現実をも飛び越えた世
界です。ですからしばしば「現実」の風景は無視されて、想像の世界の「不
二」が描かれます。

本図のように、三保の松原ごしに見える霊峰ですが、この図そのものの配
置の風景はおそらく存在しないのではないでしょう。だって、浜があって、
海があって、富士山がある、とすれば、富士山はいったいどこですか、海の
中ですか、という配置です。

しかしそんなことは重要なことではありません。大観にとって描かれるべ
きは、「日本」の「心」なのです。戦後、国破れて山河あり(『国破在山河』)、
というそのものズバリの画題の作品がありますが、この三保の富士の構図は、
同じ心で描いたものではないでしょうか。昭和25年。国は破れたけれども、
日本には松原があり、海があり、そして不二がある。かけがえのないヤマト
ダマシイは今も尚生きている。

そのことを描きたかったのではないでしょうか。

そこで、その「理想」の「夢」を紡ぐ装置として、大観は、江戸期の絵巻
物が場面転換に決まって使った「金雲」を用いています。「金雲」は便利な
もので、空間や時間などの位相の違うふたつの風景を易々とひとつに結びつ
けます。そのうえ、金泥の豪華な装飾効果も得ます。三次元的表現を持たな
かった「日本画」が獲得した融通無碍なる方法ですが、ここに大観は金雲を
荘厳たる表現にアレンジして用いているわけです。

理想の風景。理想の不二。
国破れても山河あり。

つまづいても、戻るべき「心の風景」が、ここにあります。

http://www.syukado.jp/jp/search/detail/type/kake/A05-1074.html

横山大観『霊峰不二』 昭和25年(1950年)
紙本着色軸装
本紙49.5×60.5 cm 総丈153.2×76.5 cm
落款・印・共箱
画集『横山大観』(大日本絵画)第4巻 昭和(II)所収。

作品は一点限りです。お問い合わせ・ご用命はお早めにお願い致します。品
切れの際はご容赦くださいませ。

作品は、東京・銀座六丁目、電通通り沿いの、弊社アートオフィスJC画廊で
御覧になれます。また、スタッフ出張により御覧いただくことも出来ますので
ご遠慮なくお申し付け下さい。

<弊社開廊時間>
平日、土曜 10:00-18:00
日曜休廊
※平日にお越しの方には、当店自慢の美人社員・イケメン社員(当社比)が
お茶をお入れします!

弊社案内図
http://www.syukado.jp/jp/support/first/f04.html
http://aojc.co.jp/corp/index.html#map
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「365日懸賞」引き続き実施中です!

今回は、現金1万円または、宇田荻邨先生の複製版画が当たります。

その他、協賛各オンラインショップから、ほぼ毎日プレゼントが当たります。
今回は11月3日締め切り。この機会にぜひご応募ください。
http://www.syukado.jp/365/index.html
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スタッフ募集します!

正写真を新たに募集いたします。一名。
仕事内容は、作品の整理、撮影、ウェブへの登録、画廊での接客など。
文章力に自信がある方、ウェブや画像の処理が得意な方、歓迎します。

詳しくはこちら
http://www.aojc.co.jp/corp/recruit.html

まずはメールでご連絡の上、弊社まで履歴書(写真添付)を送ってください。
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さて、今週はお待たせ、元気女子社員イヤマのコーナー。

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イヤマの☆★☆今週のステキさん★☆★ 「ユニークな画廊」
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はじめての方、はじめまして。2回目以降の方、こんにちは。
アートオフィスJC イヤマナオコでございます。

早いもので、10月も下旬ですね。

先日の予告通り、
今回は、ちょっとユニークな社内風景をお届けいたします。

それではさっそくまいりましょう!

☆★☆

当社の「ユニークな存在」と言えば、なんといっても弊社会長、
田中自知郎が真っ先に頭に浮かびます。目利きにおいては同業の方からも
一目置かれる頼もしい存在ですが、その素顔はなかなかにお茶目。

本日は、そんな田中の可愛らしい?横顔をご紹介いたします。

1.“電話は苦手”編
例外的に静かな日もありますが、当店には
ほぼ毎日、たくさんのお電話を頂戴いたします。

査定・買い取りご希望の方、開業以来のお取引先の方、
同業(美術商)の方、そしてお得意様…。

先日のある朝も、受け切れないほどたくさんのコール音が鳴っていました。
そのうちの1本を受けた自知郎。有難いことに、田中はこういう労をちっとも
厭いません。

それでつい、電話応対をお願いしてしまっているのですが、

その日は、なんとも、まぁ。

朝早い時間で、ぼんやりしていたのかもしれませんが、
「はい。」と言ったきり、その先が続きません。

電話の向こうでは、相手先を確認していたことでしょう。

しどろもどろになった田中が続けます。

「え?うちですか…?うちは、えーと、えーっと…。
あっ!アート…、アートオフィイスゥ…

アートオフィースー…オーシーですーっ!」

この言葉には、社内全員がズッコケました。私のみならず、
他の電話を受けているスタッフもみな吹き出さんばかり。(苦しかった…)

当の本人はと言えば、受話器を握って必死の形相、額にはうっすらと汗。
齢70の田中にとって、当社社名の発音は、少々難易度が高いようでした。

ちなみに、私どもの正式社名は、
『アートオフィスJC(ジェイシー)』でございます。

2.“実は恐妻家?”編

日々の田中を見る限り、怖いものなんて、まーったくないように思えます。
誰に対しても態度を変えることなく、あくまで飄々と、そして誠実で、紳士で。
約9ヶ月前、そういう田中の姿にピン!と来て、当社への入社を決めた私です。
(そして現在も、仕事面でも、人格面でも、田中を尊敬し続けています)

が、ついに、唯一の?弱点を見つけてしまいました。

その日、なかなか田中と連絡がつかないことがあり、やむを得ず田中千秋が
自知郎宅に電話を入れました。電話に出てくださったのは自知郎の奥様、つまり

千秋のお母様にあたる人です。
(ここで少しご説明。
田中自知郎と千秋は親子で、それぞれ弊社の会長・社長でございます)

千秋が奥様(お母様)に、
「これこれしかじかで、
もしそちらに連絡が入ったら、至急社に連絡するよう伝えてください」

と告げて数十分後、怒りのコールバックが。
千秋宛ての電話の受話器から、自知郎の怒号が聞こえます。

会社に戻ってきてからも、田中はブツブツと怒りを再燃させておりました。

「なんで家に電話するねん。ちゃーんとゆうて行っとったやないかっ!
至急、なんて家に電話したら、いったい何事かと思うわ。それに…」

それに?

その後に続く小さな呟きを、わたしは聞き逃しませんでした。

「それに、連絡とれんなんて言うたら、後で美代さんに怒られるやないか…」と。

田中が愛妻家なのは知っていましたが、ここだけの話し、
実はかなりの恐妻家でもあるのかもしれません。

怒りの原因は、奥様に心配をかけてしまったこと、
そして最愛の奥様に怒られることにあった模様。

しょんぼりとうつむくその姿は、まるで少年のように可愛かったのでした。

※注:「美代さん」は仮名です。

★☆★

・今週のステキさん…田中自知郎と笑いのある画廊
・今週のステキ度 …☆☆☆☆☆

田中自知郎 ― 千秋親子のプロフィールはこちらです。
http://www.aojc.co.jp/corp/profile/index.html

☆☆☆☆☆☆☆
おまけコラム

来年の1月11日(水)から2月19日(日)まで、東京国立博物館(通称トーハ
ク)で、特別展 「書の至宝−日本と中国」が行われます。

その記者会見が、先日、日本外国特派員協会で行われました。何故か、私の
もとにも、「記者会見」のお知らせが参りまして、私のこの通信も「マスコ
ミ」として、認めて下さったのかしらん、と喜んでしまいましたが、冷静に
考えれば、反対に、東博さん(およびその企画会社)が、いかに力を入れて
この企画を行っているか、という現れだと思います。

内容については、何回かに分けてご紹介していきたいと思いますが、日中の、
まさに「書の至宝」と呼ぶにふさわしい作品が展示される空前絶後の機会だ
ということですので、ぜひご注目いただきたいと思います。

ところで、記者会見では最後に、何故か「横浜大世界」の「中華饅頭」がお
土産に配られました。こういう気の効き方も、あたまのカタイイメージの
「博物館」の様変わりを感じさせます。オイチカッタ。

参考リンク:
「東京国立博物館 主な展示予定」(書の至宝展はページ半ばに紹介されて
います。)
http://www.tnm.go.jp/jp/exhibition/regular/one_year.html

「横浜大世界」
http://www.daska.jp/top.html
※おみやげのお礼でリンク!

秋華洞・丁稚ログ(10月アーカイブ)
http://blog.livedoor.jp/syukado/archives/2005-10.html
※記者会見を巡る小生のはしゃぎぶりをご覧頂けます。

株式会社ウィンダム
http://www.windam.co.jp/company/profile.html
※今回の企画会社さんです。HPが面白かったのでご紹介してしまいます。

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をお寄せ下さい。ここが違うゾ、という率直なお叱りも勿論歓迎致します!

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代表取締役 田中自知郎・田中千秋
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主に日本の美術品・古美術品を中心に、幅広く取り扱っております。

近代絵画・現代絵画を軸とし、さらに、鎌倉・室町時代より、現代に至る
まで、あらゆる分野で活躍した画家・高僧・武将・文人・歌人・俳人の手に
よる絵画・書蹟、時代屏風、絵巻、古文書、古写本、古版本、稀覯本(きこ
うぼん)を専門とし、その他、彫刻、工芸品、茶道具など、多岐にわたって
対応致します。

弊社は平成15年に設立、平成16年に開店致しましたが、50年近く美術業界
で活躍した代表・田中自知郎が長男・田中千秋と共に新たに設立致しました。

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