2018-11-03日本美術そうだったのか通信
Vol.386 【画集刊行記念 チン・ペイイ個展】のご案内!&難しくて楽しい伊藤晴雨の世界【その3】

Vol.386 【画集刊行記念 チン・ペイイ個展】のご案内!&難しくて楽しい伊藤晴雨の世界【その3】
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日本美術のホットニュース、業界裏話など、日本美術をより楽しむための情報を
お届けします。株式会社秋華洞提供。
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まずは、秋華洞 参加中のアートフェア情報から。

【画集刊行記念 チン・ペイイ個展】のご案内です。

日本デビューから1年。
11月に刊行される 「陳珮怡画集 猫さえいれば」(青幻舎)の刊行記念展です。
驚くほどリアルで綿密な描写で、なんとも愛らしい猫を描く
台湾の実力派作家、陳珮怡(チン・ペイイ)の日本初個展です。

【会期】11月9日(金)~19日(月)
    場所:ぎゃらりい秋華洞 時間:10:00~18:00 会期中無休 入場無料
    ※レセプションは11月9日(金)17:00~ ※9日、10日作家在廊します
詳細はこちら↓↓
https://www.syukado.jp/feature/2018/11/chen-pei-yi.html

    ※『陳珮怡画集 猫さえいれば』
(青幻舎)http://www.seigensha.com/category/newbook

画集は展覧会場で先行販売いたします。サイン入り!
※サイン入り画集は秋華洞HPでもご予約承り中!!
https://jp.japanese-finearts.com/item/list2/B4-93-501//Chen-Pei-Yi–All-I-Need-is-My-Cats-

是非、お立ち寄りくださいませ!

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■今回の「そうだったのか!」━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………

前回に引き続き、「難しくて楽しい伊藤晴雨の世界【その3】」をお送りします。
【前回】https://www.syukado.jp/sodatta/vol385/

こちらのお作品をご覧になりながらお楽しみくださいませ。
https://www.syukado.jp/list/ito_seiu/A2-93-387.html

前回 vol.385 では本紙のモチーフのうち、
・【左下】赤い髪、青海波模様の袴をつけて寝転んだ『猩々』。
・【左の中央】「吉原細見」を持って着流し姿のカラスは『明烏』。
・【左中央】で目隠した人物は『仮名手本忠臣蔵』の大石内蔵助(大星由良之助)
・【右中央】おおきな斧を持った『積恋雪関扉』の関兵衛こと、実は大伴黒主。
・【右中央】で、後ろ向きで大盃を持ってるのは、『大杯觴酒戦強者』
(おおさかづきしゅせんのつわもの)の足軽、原才助こと、実は馬場三郎兵衛信人。

と、5点の検証したところです。今回はその続きから。

さて、お次は…
【右中央】には、桶?を置いて頬杖ついている人物。
なんだか、とぼけた雰囲気のこの人物。着物の模様が丸紋の「宝尽くし」文様
なところにご注目。(これまた画像だと見えづらいですね。申し訳ありません)
丸紋の「宝尽くし」は狂言の装束に使われることが多い柄です。 
そして、手前においてあるのは、葛桶の蓋に見えます。
葛桶(かずらおけ)は「鬘」桶とも書きまして、
もともとは鬘(髪につける髪飾りやカツラ)をしまう円柱型の漆塗りの桶です。
これは狂言では、腰掛けとして使ったり、酒桶に見立てたり、
蓋を盃のかわりに使ったりと、度々登場する重要な小道具の一つ。
「お酒」とも密接に関わっていますね。
「酒」に纏わり、葛桶が登場する狂言の演目といえば、『棒しばり』や
『千鳥』、『素襖落』の太郎冠者、次郎冠者の滑稽な姿が思い出されます。
うーん、これは演目を一つに縛りづらいですね。
あえて断定しなくでもいいでしょうか。
「狂言」のお酒に纏わる冠者、という大きなくくりで許してくださいませ。

画面下の方『猩々』のあたりに戻りまして…
【左下】大きな盃で亀にお酒を飲ませいるような老人は…というと。
古来より日本全国に広がって、漁の網に引っかかったり、
陸に上がった亀には、盃でお酒を振る舞って海に返すという風習があるようです。
賢い亀は酒の恩を忘れず、必ず恩返しをするから、とか
神様の御使いである亀に礼を尽くし、今後の大漁を祈願するため、とか
理由は様々ですが、なんとなく納得できる風習ですね。
(亀さんには迷惑のような気もしますが…お酒飲んでも大丈夫でしょうか?)
「漁師」に「亀」と言えば、みなさん思いつく物語がお有りかと思います。
そう。「浦島太郎」です。
各地に伝わる浦島太郎の類型の民話の中には、
いじめられた亀を助けた後、お酒を飲ませて海に返してあげた、という
描写があるものが多数見つかります。そのお酒のお礼もあって竜宮城に
招待されるわけですね。

ところで、上方の古典落語に『小倉船』という演目があります。
もとは滝亭鯉丈が延享4年(1747)に出版した笑話本『軽口花咲顔』中の
「水いらず」という小話から。
明治期には東京でも「浦島屋」、初代三遊亭圓遊は「水中の玉」、
二代目三遊亭圓歌が「竜宮」とか「竜宮界龍の都」と題して
改作が演じられています。

本家上方の落語の演目『小倉船』のお話ですが、
九州小倉と大坂馬関(下関)を往復する船に乗り込んだ男が、
大金入りの胴巻きを海に落としたので、
あわてて船客の持っていた大きなギヤマン(ガラス)のフラスコに入り、
海に潜って探すことに。
深くなるごとにフラスコにヒビが入って、みるみる海底へ…。
気がつくとそこは龍宮。
この男を浦島太郎と間違えた乙姫様や侍女のもてなしを受けるうちに、
本物の浦島が現れて一転。偽物とバレて追われる身となりまして、
男は竜宮の駕籠屋に逃げ込みますが、そこの駕籠かきが赤ら顔の猖々(猩々)で…。
とサゲに続きます。
「浦島太郎」に「猩々」まで出てくる演目なんですね。
本紙の描写にピッタリ。

加えて、亀にお酒を振る舞っている大きな盃を見直してみましょう。
「竜宮」を思わせる龍の絵が描かれた盃の中央には、
菱形を3つ重ねた「丸に三階菱」という家紋が描かれてるのがわかります。
この「三階菱」は甲斐源氏武田氏の一族の小笠原氏の家紋として有名なもの。
『小倉船』の出港する「小倉」は、毛利勝信、細川忠興が築城した
唐造り天守の名城「小倉城」(現在は再建されたもの)を中心に
発展した九州要衝の地。
細川氏に代わって、1632年(寛永9年)に小笠原忠真が入国して以降、
小倉藩主は代々小笠原氏一族が継ぐことになります。
ということで、もちろん!家紋は「三階菱」なのです。

さて、モチーフを7つ謎解きしてまいりましたが、
この辺りから徐々に暗雲が立ち込めてまいりました…。

お次は、【右下】瓢箪の前の老人。
中国の仙人のように見えますね。
中央に大きく描かれた「瓢箪から駒」のことわざを扱った落語『鉄拐』に登場する
仙人、張果でしょうか?
張果老は、中国唐代の八仙の一人にも名を連ねる道士。
一日に数千里も移動する白い驢馬に乗って、休むときは驢馬を紙にように小さく折りたたんで
巾箱の中にしまうことができ、また乗るときは水を吹きかけるともとの驢馬に戻ったといいます。
どうやら馬を「瓢箪から」出すというのは、日本独自に転換された逸話のようですが、
古くから物語や、日本画の画題になったりと、なかなか有名な御老体です。

お酒と関わるエピソードというと、酒と丸薬しか口にしなかったとか、
酒樽を童子に変えたとか、玄宗が張果に毒酒を飲ませ、仙人か見定めようとした際、
毒で黒く焦げた歯を叩き落とすと、もとより立派な歯が生え揃ったなどがあります。

ちなみに、ジャッキー・チェン主演の映画『酔拳』、ご存知でしょうか?
酔拳とは中国武術の一種で、酔っ払ったような独特の仕草で繰り出す象形拳、とのこと。
(実際にお酒を飲みながら戦うわけではないそうです)
映画で登場したのは「酔八仙拳」というもので、元となったのは、
張果老も名前を連ねる八仙のそれぞれの酔い方を拳法にしたもので、
張果老の拳は軽やかな足技らしいです。

イマイチ、これだ!とすっきりしないのですが、この老人の考察は切り上げて。

と、今回も長くなってしましましたが、
前回と合わせて8点のモチーフを考えてみたところで
【次回に続く】とさせていただきます。
(次回でこの話題は終了予定です!)

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