2004-09-21日本美術そうだったのか通信
Vol.11 《日本美術そうだったのか通信》[真贋その3]
アートオフィスJC 田中千秋です。

みなさん、連休中はどちらかにいかれましたか。

私の方は、週末に、とある先輩に、六本木の「金魚」なるところに
連れて行って頂きました。

ちょっとびっくりしました。

店構えからして、たんにアヤシイ、オカマバーみたいなところかし
らと思っていたら、演出は日本人が共有して持つ歴史の痛みと郷愁
をつく奥深いものであり、かつ、某超有名企業が納入したという、
エレベータ技術を応用した素晴らしい舞台装置とアクロバティック
な踊りを巧に組み合わせた心憎い職人芸でありました。

かつ出演者の大半は「ニューハーフ」であり、彼らの甲子園とも呼
ばれるそうで、ようするに現代の見世物小屋的要素もあるのですが、
観光コースにも含まれているそうで、じじつ、東北などの、地方か
らのお客さんが非常に多いようでした。

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□■□■  「日本美術そうだったのか通信」 Vol.11
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■□■□ 真贋について その3
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真贋についてその1
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真贋についてその2
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前回ふれたように、流通上の仕組みとして、明治以後と、明治「未
満」とは、真贋の考え方が異なります。

「個人」とか「オリジナル」という事が尊重される「近代」が輸入
された明治という時代が、真贋に関する考え方の慣習を変えたのだ
ろうな、という想像がつきますが、それは兎も角。

江戸期以前の品物については、こと流通上の意味においては「真贋」
というのは、誤解を恐れずにいえば、あまり重要視されません。

何故か。

「その1」でも触れたように、それは「真贋」という事が、ことの
本質として、絶対に「白」、絶対に「黒」といいきれない性質の事
だからといえます。(それは本質的には明治以降も同じですが、こ
こでは一応のルールがあります。)

むしろ古美術商がよく使う言葉は「いいもの」か「だめなもの」か
です。つまり、市場で「いいもの」として通るか、あるいは通らな
いか、という市場判断がある種の「判定」ということになります。

すなわち、非常に専門的に優れた画商・美術商、そして優れた目を
持つお客様を含めた「世間」で、「いいもの」=高価なもの、とし
て、通るか通らないか、の方が問題となります。

一方で、真贋を、ある種の権威者が「言い切って」しまうことには、
ある種の危険性があります。

たとえば「真」のものを、「贋」と言ってしまう、と、せっかくの
本物が、「贋物」扱いで、遺棄されてしまうかもしれない。

それは文化的に言って、大分罪深いことでしょう。

逆に「贋」のものを「真」と言ってしまうと、新しく美術・美術史
を学ぼうとする人の眼を曇らしてしまう事になるでしょう。それは
やはり美術史的損失と言わなければなりません。

ですから、美術商としては、(お客様や市場からの)仕入の際、
「これは○○で買える」「これは1000円でもいらない」という「表
現」が、真贋に対する意見の表明、という事になります。

これは「白」と思えば、白の値段、「マックロクロ」だと思えば、
黒の値段(500円)、灰色、と思えば、灰色の値段をつけることに
なるでしょう。勿論数が最も多いのは「マックロクロ」で、目利き
になるほど、「マックロ」の判断が瞬時につくようです。

さて、そうした前提がありながら、(まともな)美術商が、もし、
これは贋物です、とか、印刷です、と言い切るときは、かなりの自
信を持ってそういえるときでしょうし、本物です!と言うときは、
どうあっても「ゆずって欲しい」という時でしょう。

ただ、いずれにしても、美術商の「値付け」による間接的な「真贋
の表明」が、ある種の信頼性を持つのは、美術商はその値段で「買
う」といういわばイノチガケの意思表示をしているという事につき
ます。

買う意志のない個人が、それがいかなる権威者であれ、この作品の
価値は、100万と言おうが、1億円と言おうが、それは架空の値段に
すぎません。

ところが、美術商の付けた値段は、その値段で買う、という「生き
た」値段です。高く買いすぎても、低く買いすぎても、結局、美術
商は生き残ることが出来ません。市場の価格を意識しつつ、真贋鑑
定を含めた判断を一瞬にして行う、審美眼--生活のかかった「目利
き」術なのです。

....と、力が入ってしまいましたが、私の立場で書いても手前味噌
かもしれませんね。ただ、真贋に関しての判断の厳しい現実は、
「売買」の際にいちばん露わになる、という事は事実と言っていい
と思います。

せんじつめていえば、古美術流通の現場では、「真贋性」よりも「
市場性」が重要である、「市場性」の中に「真贋性」が包摂される、
と言っていいでしょう。(小難しい言い方でスミマセン。。。)

<この項はまた来週>

ちなみに、美術史を巡る、学者のアカデミズムと美術業界の関係、
贋作の背景などに深く踏み込んだ小説

松本清張「真贋の森」

という作品があります。

この本は、本メルマガの読者様に紹介して頂いて、今、読んでいる
ところであります。ドロドロした現実を描写するのに小説というシ
ステムは素晴らしいですね。面白そうです。

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本日は読んで下さいまして有難う御座います。
また明日!

((ご意見、お待ちしています。このメールへの返信で私に届きます。))

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