美人画の系譜Ⅱ|ART FAIR TOKYO 2025
2025年3月7日(金)〜9日(日)
自分の画法に辿り着けず失意のなか、亜麻布に泥を悪戯に擦り込み湯で洗てみたら理想的な肌色が現れ、その再現に十年かけたというのは池永のエピソードである。
デビュー後、しかしその煩雑で繊細な画法が次第に破綻してゆくのを知っている。
池永は一度「あなたの気質はは芸術家か職人か」と尋ねられて「自分はメソッドを探す者だ」と答えている。
彼はこの数年ひっそりと新しいメソッドを試しており、ようやく答えに辿り着きつつあるのだという。
それは、己だけの理想の肌色の発現させる為という点においてひとつのブレもない。
また、恋人を描くことから初めて、次第に画家と若きモデルという隔たりゆく関係に苦しんでいたが。
老いる隔たる毎に女性像への憧れは強くなり、老いることと未来への楽しみを今は得ていると言う。
夜見る夢の筋書きは、誰が書いているのだらう。
老いても初恋の夢を見る、私の記憶を装った、誰も見知らぬ物語。
夢遊に咲いた白い花、手折ろうとするは誰が指か。
我もと伸す腕先は、あの日の指か老いた手か。
今でも初恋の夢を見る、目覚むるまでの嘘を見る。
夜遭ふひととの筋書きを、繰っているのは誰だらう。
夢遊に揺れる白い花、手折って去ったは誰が指か。
― 『白い花』池永康晟 ―