2021-03-11日本美術そうだったのか通信
vol.410 【特集】篠田桃紅哀悼企画「墨に生きる」

日本美術のホットニュース、業界裏話など、日本美術をより楽しむための情報を
お届けします。株式会社秋華洞提供。
——————————————————————————-

まずはHPぎゃらりい秋華洞内で御覧いただける『特集』のご案内です。

「篠田桃紅哀悼企画「墨に生きる」」

2021年3月1日、107歳にして惜しまれつつこの世を去った
孤高の美術家、篠田桃紅。
100歳を超えてなお旺盛な創作活動を続けた彼女の作品は、
年を重ねるごとに進化を重ね、見るものに常に新鮮な驚きを持たらします。

己を貫き通した美術家の軌跡を、今あらためて振り返り、哀悼の誠を捧げます。

https://www.syukado.jp/feature/202103/

冴え渡る墨色は直に見てこそより深く味わえるものです。
ぜひ、銀座のぎゃらりい秋華洞にて、その深淵な世界をご覧くださいませ。

また、 本企画の作品は、 銀座の画廊スペース【ぎゃらりい秋華洞】にて
3月12日(金)~3月19日(金)の期間展示いたしております。
是非実物のお作品もご観覧くださいませ。
——————————————————————————-
さて、本日の「そうだったのか」は、この『特集』に合わせまして、
孤高の美術家、篠田桃紅についてのそうだったのかをお送りします。

【篠田桃紅略歴】

1913年(大正2)、東亜煙草株式会社の大連支店長であった父 頼治郎の勤務地、
旧満州の中国大連で生まれます。本名は満洲子(ますこ)。
翌年父の転勤で帰国し、東京でくらすこととなります。
父 頼治郎の実家は岐阜の長良川の上流近くで代々庄屋を務める大地主の一族であり、
頼治郎も漢学、篆刻、書など東洋の伝統文化に関する教養を学んだ知識人。
桃紅がはじめて墨と筆を手にしたのは、6歳(満5歳と思います)のお正月の書初め
であったといいますが、そこから東洋文化の精神と伝統書道をこの厳格な父に
習うこととなります。

1925年(大正14)には、首席で入学した東京府立品川高等女学校(桃紅卒業時は
東京府立第八高等女学校の名称、現在:東京都立八潮高等学校)にて
当時高名だった師 下野雪堂のもとで和歌や書の指導を受け、
その関係は卒業後も数年続きますが、桃紅は女学校時代以外はほとんど独学で
書を学び続けていくのです。
同時に、英語は詩人北村透谷の妻 北村ミナ(美那)に、
与謝野晶子の門人中原綾子の元で短歌を学んでいたことも桃紅の作品世界に
大きく関わっていることでしょう。

卒業数年後からは書を教え始め、
1936年(昭和11)には銀座の鳩居堂にて初個展を開きます。
秋華洞からもほど近い鳩居堂は銀座中央通りに面した書画用品や香を扱う老舗専門店。
ちなみに2020年まで35年間連続で、この鳩居堂の前の土地が日本の路線価トップなのです!
はがき1枚分の面積では地価約68万円だそうですよ。

初個展は、古典を重んじる戦前の書道界の伝統主義のとは合わず、
「根なし草」、「才気だけの基礎のない書」と酷評されるものとなります。
当時の書道界にとっての「根」とは中国古典に根付いた書法、書作のこと。
しかし、それらを忠実に真似ることを良しとせず、取り込んだ上で
独自の世界を切り開いた桃紅の世界観は、水墨による抽象「墨象」作品へと
昇華され、さらなる進化を遂げることになります。

そして戦後、1956年(昭和31)から2年間、ニューヨークを拠点にボストン、
シカゴ、パリと、全米をはじめヨーロッパ各地で精力的に個展を開催し、
抽象美術家として国際的に高い評価を受けた日本人芸術家の1人となりました。

その目覚ましい活躍は作品にとどまらず、レリーフや壁画などの建築物に関わる
大作を手がける一方、版画、随筆などさまざまな分野に広がっていきました。
中でも飾り気がなく自然でありながら格調高く、桃紅の人柄に触れることのできる
数々の随筆は人気を博し、「墨いろ」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞したほか、
晩年の「一〇三歳になってわかったこと」は40万部を超えるベストセラーとなっています。

【雅号「桃紅」について】

桃紅は自身の雅号について、
「春に生まれた私に、父がつけてくれた雅号で、出典は、中国の古い『詩格』という
書物の中にある。“桃は紅、李は白、薔薇は紫 春風は一様に吹くが、花の色はそれぞれ”
といった意味の詩である。」(『桃紅百年」』「濃き紅」より引用)
と語っています。
中国の『詩格』より「桃紅李白薔薇紫 / 問著春風總不知」
(桃は紅、李は白、薔薇は紫、どうしてそう咲くのかと春風にたずねても、
まったく分からないという…意味かと。)

また、李白の『山中問答』に現れる「桃花流水杳然として去る」
「問余何意棲碧山 / 笑而不答心自閑 / 桃花流水杳然去 / 別有天地非人間」
という漢詩、
(こんな緑深い山奥になぜ住んでいるのかと人が問えば、
ただ笑って答えず、心はのどかなものである。
桃の花が水に乗って遥か遠くに流れてゆく。ここは俗世を離れた別天地である…
というような意味かと)
《李白》という作品も残す桃紅ですから、こちらの漢詩も雅号と通じるところがあります。

とどまることなく、訪れては去ってゆく春の花のような清々とした潔さ。
俗世を離れたかのような超然とした人生と、しなやかにして強靭な精神。
生涯芸術に生きた彼女の凛とした姿は、
作品に無限に広がる「墨」の幽玄世界に生き続けることでしょう。
その断片を秋華洞の所蔵作品から感じていただければ幸いです。

——————————————————————————-
★新情報★
・銀座の画廊で働く社長ブログ
http://www.aojc.co.jp/blog/

・YouTube
銀座 秋華洞 美術品買取・販売↓↓
https://www.youtube.com/channel/UC_gJdcTBG8LiLz8yz_EeVbg

・ぎゃらりい秋華洞 新着作品
新商品ぞくぞく公開中です!!【3月に新入荷】
https://www.syukado.jp/list/?t=new_arrival_in_march
その他更新多数!
https://www.syukado.jp/list/

・浮世絵サイト…新着情報
笠松紫浪「温泉の朝 信州野澤」
https://jp.japanese-finearts.com/item/list2/A1-91-530/Kasamatsu-Shiro/Nozawa-Onsen-in-the-Morning
国芳「源頼光公館土蜘作妖怪図」
https://jp.japanese-finearts.com/item/list2/A1-95-302-17/Kuniyoshi/The-Earth-Spider-Generates-Monsters-at-the-Mansion-of-Lord-Minamoto-Yorimitsu
川瀬巴水「中禅寺湖 歌ヶ浜」
https://jp.japanese-finearts.com/item/list2/A1-96-022/Kawase-Hasui/The-Lake-at-Ch%C3%BBzen-ji–Utagahama
その他新着はこちら
http://jp.japanese-finearts.com/
——————————————————————————-
メルマガ担当:上村

株式会社秋華洞
http://aojc.co.jp
東京都中央区銀座6-4-8 曽根ビル7F
TEL 03-3569-3620 FAX 03-3569-3621
E-mail info@syukado.jp

営業時間
月~土 10:00~18:00
日曜・祝日 定休

*東京銀座ぎゃらりい秋華洞
https://www.syukado.jp

*SHUKADO CONTEMPORARY
https://shukado.com/

*Japanese Fine Arts.com
https://www.japanese-finearts.com/

*Facebook
https://www.facebook.com/Shukado.Japan.Art

*Twitter
*ぎゃらりい秋華洞の公式Twitterアカウントを開設しました
https://twitter.com/shukado_tokyo
https://twitter.com/syukado

*SHUKADO CONTEMPORARY 公式Twitterアカウントを開設しました!
https://twitter.com/shukado_tokyo