2021-02-21日本美術そうだったのか通信
vol.409 カタログ65号より藤田嗣治《猫を抱く少女》によせて
日本美術のホットニュース、業界裏話など、日本美術をより楽しむための情報を
お届けします。株式会社秋華洞提供。
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まずは現在開催中の企画展のご案内です。

◆ぎゃらりい秋華洞にて
『三人展(長谷川雅子・新美宏樹・津田光太郎)』
【会期】2021年2月19日(金)~27日(土)
※ 長谷川雅子さん滞在予定→2/23、2/27
【会場】ぎゃらりい秋華洞
【時間】10:00〜18:00
【備考】会期中無休 入場無料
【WEBサイト】↓↓
https://www.syukado.jp/exhibition/sannin-2020/
https://shukado.com/exhibition/sannin-2020/
オンラインでの販売もしています。上記リンクより作品をご覧ください。

ビビットな色使いでユーモアとアイロニーを込めた作品を制作する長谷川雅子、
アートとデザインの境界線にとらわれず自由な作風で注目を集める新美宏樹、
画面の中でリアルとSFの世界が鮮やかに交差する津田光太郎。

この機会に是非お楽しみください!
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◆カタログ65号より藤田嗣治《猫を抱く少女》によせて

さて、現在発刊中の最新カタログ65号の表紙は、国内外を問わず大人気の
藤田嗣治のドローイングから《猫を抱く少女》です。
胸元に縞模様の猫を抱き、まっすぐ正面を見つめる印象的な少女像。
「少女」と「猫」という、まさしく正しく「フジタ」を体現する一枚では

ないでしょうか。
少女の眼差しは凛として力強く決意のようなものさえ感じさせますが、
捉えようによってはその表情は無表情とも、人形のようとも思える
無機質で硬質な印象を抱かせるかもしれません。
このなんとも藤田らしい一枚につきましてご案内いたします。

■藤田の略歴■
1913年(大正2年)、若くして渡仏し、パリのモンパルナスにアトリエを構えた

藤田。(ちなみに、隣の部屋には「親友」モディリアーニが住んでいたのです)
日本画の伝統を受け継ぐ、面相筆を活かした繊細な筆致に、
「乳白色の肌」と呼ばれる透き通るような白の表現が評判を呼び、
わずか数年の内に「パリの寵児」とまで謳われるようになります。
その後、1925年にはフランスからレジオン・ドヌール勲章、ベルギーから
レオポルド勲章を贈られ、その画家生活は順風満帆かに思えますが、
第二次世界大戦が勃発した1939年(昭和8)には、日本への帰国を余儀なくされ、
戦中は従軍画家の役目を与えられ戦争画の制作を手掛けることになります。
そうした中、「国のために戦う一兵卒と同じ心境で描いた」と語った戦争画の
傑作《アッツ島玉砕》が生まれることとなるのです。

戦争画を描いた藤田の心中には、海外の生活の中で改めて意識した
「日本人」であることの自負、そして、日本人として自国に貢献したい

という思いがありました。
しかしながら、敗戦後の連合国軍占領下の日本において、
「戦争記録画」の制作に従事した画家たちは、「戦争協力者」のレッテルを
貼られ、マスコミの激しい非難の対象とされてしまいます。
藤田もまた、その戦犯画家の中心人物かのように責任を糾弾するマスコミに
晒され、こうした日本国内の情勢、画家への弾圧を憂い、1949年、
「絵描きは絵だけを描いてください。仲間喧嘩はしないでください。
日本の画壇は早く世界水準になってください」という言葉を残し、日本を去り、
二度と日本には戻らずフランスへ帰化することになります。

■戦後の藤田■
さて、藤田が子供を多く描くようになるのは第二次世界大戦後のこと。
傷心を抱えて再びフランスへ移り住んだ藤田の心を癒やすのは、
無垢な子供の姿であったのかもしれません。
加えてこの頃から宗教画の制作も盛んになります。
1959年にはランスのノートルダム大聖堂でカトリックの洗礼を受け、
敬愛するレオナルド・ダ・ヴィンチにちなみ、洗礼名「レオナール」の名を
もらい、以降、レオナール・フジタと名乗り、作品には「L・Fourjita」と
サインするようになります。
そして、彼の宗教画の殆どは販売することを念頭においていない、
純粋な信仰心による制作であったようです。

■藤田と子供■
戦後、藤田よって描かれた子供像にはモデルはおらず、
「私の数多い子供の絵の子供は皆私の創作で、モデルを写生したものではない。
この世の中で見た子供の印象は忘れずに画の中には取り入れる事もあるが、
本当にこの世の中に存在してる子供ではない。私一人丈けの子供だ。
私には子供がない。私の画の子供が私の息子なり娘なりで一番愛したい子供だ」
(夏堀全弘『藤田嗣治芸術試論』 :1966年頃、藤田から夏堀昇氏への書簡より)と
藤田は語っています。
藤田が描いた多くの子供像は、例えば庇護欲を唆るような幼子らしい表情を
浮かべる代わりに、真実を見通すかのような達観した視線を投げかけ、
どこかこの世ならざる者の如き神秘性を帯びています。
それは画家の「一番愛したい子供」というものが、純真を極めるがゆえに
人間を超越した存在として描かれているからではないでしょうか。

■カタログ掲載作 《猫を抱く少女》について■
最後に、本作の少女もやはり、子供の愛嬌ある表情とではなく、
真摯にして静謐な視線を私達に投げかけてるようです。
その姿は「愛すべき子供」の純真以上に、のちに洗礼を受けるフジタが
熱意を持って描いた、宗教画に通じる風格と神聖さを湛えています。
そして、その腕に抱かれた猫の姿。
藤田はサインをする代わりに「猫」を描いたと自ら語っています。
であれば、猫は藤田にとって自らの写し身でしょうか。
自由奔放な猫は、とかく女性とイメージを重ねられますが、
それと同時に画中を自由に飛び回る姿は、藤田の魂の現れと言えるのかも
しれません。
少女の腕に優しく庇護され、心地よく安らぐその姿は藤田の分身であり、
少女は幼きイエスを抱く聖母マリアの姿になぞらえて、画家の魂に安寧を
もたらしているようです。

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◆◆まだカタログをご覧いただけていない皆様へ◆◆
もし、ご興味がございましたら、
お試しとして今回のカタログを無料でお届けいたしますので、
是非お問い合わせくださいませ。

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カタログの感想も、スタッフ心よりお待ち申し上げております。

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