2020-12-24日本美術そうだったのか通信
vol.407 冬季休業のお知らせと、来る「丑年」にちなんで日本画のおなじみ「十牛図」のお話

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お届けします。株式会社秋華洞提供。
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■冬季休業のお知らせと、来る「丑年」にちなんで日本画のおなじみ「十牛図」のお話

まずは、まずは、秋華洞の年末年始のお知らせです。
2019年12月27日(日)から2020年1月4日(月)まで、冬季休業いたします。
新年が5日(火)からの営業となります。どうぞ、よろしくお願いいたします。

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来年は「丑年」でございますので、「牛」にちなんで、
東洋画の名だたる画家たちが古くから描き続ける伝統的な画題「十牛図」。
日本では伝・周文筆とされる、相国寺蔵の円窓に描かれた《十牛図》を
思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん、それだけではなく、北斎が、長沢芦雪が描き、横山大観が、菱田春草が「牧童」として昇華した
奥深き「十牛図」の「そうだったのか」をご案内いたします。

◆概要「十牛図とは?」
「十牛図」とは、中国・北宋時代より伝わる禅の入門書です。
ある牧人が、本来の自分を象徴する牛を探し求め、
その過程で悟りをも超えた境地に至る様子を、十段階に分けて描いています。
禅の高僧・廓庵師遠禅師による画図と漢詩の頌(じゅ)、
弟子の慈遠の序文から構成され、絵とともに禅の思想が説かれています。
いつもは穏やかでありながら、時に激しく荒ぶる一面をもつ牛の性格は、
時にコントロールすることができなくなる人の心と重なる所があります。
「十牛図」では、牧人はどのように自分の心と向き合っていくのでしょうか。

十枚の絵をまとめて「十牛図」の画題として描かれる場合も多いですが、
それぞれの場面を独立して描かれることも多く、場面ごとの特徴を覚えておくと、
美術館などで牛の絵を目にした際、「あ!もしや!」と楽しく観覧して
いただけるのではと思います。
では各場面をみていきましょう。

◆第一図 「尋牛」
まずは、牧人が牛を探している場面から始まります。
序には、自分が本来もっている大切なものから目を背け、
自分がもっていないものばかり探しているから、自分が歩むべき道を見つけられない
ままでいるのだ、という内容が記されています。牧人は、自分が何者であるのか、
そして自分にとって大切なものとは何かを探す旅の入り口に立ったのです。

小平市役所HPより(外部サイトに飛びます)
平櫛田中作品《尋牛》
https://www.city.kodaira.tokyo.jp/kurashi/002/002359.html

◆第二図 「見跡」
牛を探していた牧人は、牛の足跡を見つけます。
まだ牛の姿はみえませんが、跡をたどれば本来の自分をみつかることでしょう。
序には、経典を学んだものの、その教えが正しいかどうかを自分で考えることが
できない時点では、まだ禅を理解するには程遠い、と記されています。
経典や師の言葉によって、禅の教えを理解する手がかりをみつけた、という段階です。

◆第三図 「見牛」
牧人はついに牛を見つけますが、牛の姿を一部しか見ることができません。
序には、牛の鳴き声によってみつけることができたが、自分の感覚や日頃の行いも
やはり牛をみつけるのには必要だった、と記されています。
自分が望む姿に近づくためには、特別なものではなく、元々自分が持っているものが
求められる、ということです。

◆第四図 「得牛」
牧人がみつけた牛を捕らえる場面ですが、ここで初めて牛の全身がみえます。
序では、次のように説明されています。人は牛に会えた喜びだけで満足してまったり、
牛は隙あらば逃げようとしたりする。牛の心はまだ荒々しい野生のままであるため、
従わせるためにはムチを使わなければならない。
慢心せずに、自分の心を戒めるべきであるということでしょう。

◆第五図 「牧牛」
捕まえた牛が逃げないよう、飼いならす場面です。
序には、自分の悩みや迷いを認めることで、本来の自分を認識することができるが、
牛を飼いならすためには手綱を離さず、迷わずに進むことが大切である、と記されています。
心の迷いがある段階では、牛つまり自分の目標を見失わないようにしなければなりません。

文化庁のHPより(外部サイトに飛びます)
雪舟《牧牛》
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/1121

◆第六図 「騎牛帰家」
牛を飼いならした牧人は、もはや手綱をもつ必要はなく、牛の歩くままにして家へと帰ります。
序には、牧人と牛とが一体となり、すべてが元に戻ったと記されています。
そもそも、牧人と牛つまり本当の自分とは同じものであり、牧人が牛を飼いならした状態が
本来の状態だったのです。
物語のハイライトたる場面故でしょうか、
牛の背中でゆったりと笛を吹きながら帰路につく牧童の姿は「牧童吹笛」という画題
として独立した人気を誇っております。

ぎゃらりい秋華洞でもこちらをご案内
円山応挙《牧童》
https://www.syukado.jp/list/a2-92-479/

◆第七図 「忘牛存人」
家についた牧人がくつろぐ様子が描かれていますが、牛の姿はどこにも見当たらず、
牛のことを忘れているようです。
序には、牛は本来の自分自身を取り戻すための単なる手段であり、
雲が晴れて月が姿をみせるように、ただ隠れていただけである、と記されています。
牧人は、牛は最初から自分の心の中に存在していたのだという悟りを得たのです。

◆第八図 「人牛倶忘」
ここでは、牧人も牛も登場せず、何も描かれていません。
牛だけでなく、自分も忘れてしまったようです。序には、悟りの状態に居続ければ、
悟りということ自体に迷いが生じるのだから、はやく悟りから抜け出して心を空にしなさい、
と記されています。本来の自分や目標をみつけたならば、もはや何も考える必要はないため、
悟りでさえも忘れた「空」の状態になります。
この思想を表現するのに全く何も描かないという驚きの手法(?)が取られております。

◆第九図 「返本還源」
牧人や牛が描かれないかわりに、花や樹木や川などの自然が描かれています。
序には、人は生まれた時は清らかな心を持っているが、月日が経てば凝り固まったものに
なってしまうため、何事にも執着せず、世界をあるがままに見つめることが大切である、
と書かれています。まさに、本来の状態にもどり、始まりに還る場面です。

◆第十図
・入鄽垂手
入鄽垂手とは、町に出て教えを伝えるという意味です。ここでは布袋が描かれていますが、
この布袋はかつての牧人です。序には、悟りを開いたことを人に明かさず、
仏教の戒律にしばられずに、人々の心を満たしていくだけである、と記されています。
本来の自分を取り戻した牧人は、布袋のように市井の人々を救い導く存在となったのです。

「十牛図」は、本来の自分と向き合うための道標を示すだけでなく、
あらゆる悩み考えを捨て、全てのものから自由になり、広く人々を救済するという
大乗仏教の思想を表す代表的な画題といえます。
日本でも禅の教えに共感し、大変流行った思想と画題です。
新しい年を迎えるにあたり、なにか皆様の心の素敵なヒントになりましたら
嬉しく思います。

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末尾になりましたが、
今年一年のご愛顧、誠にありがとうございました。
まだ明日は開店しておりますが、取り急ぎ年末のご挨拶とさせていただきます。

そして、来年こそ、皆様が心穏やかに安心して過ごせる年となりますように
お祈り申し上げます。

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