世は空前の猫ブーム。秋華洞では国芳・小林清親・藤田嗣治など、 江戸時代から浮世絵や掛け軸に描かれてきた猫を一堂に集め、2月22日猫の日スタートで開催しました。お越しいただいた方も、来られなかった方もこちらの特集で「猫れくしょん」をお楽しみください!
世は空前の猫ブーム。秋華洞では国芳・小林清親・藤田嗣治など、 江戸時代から浮世絵や掛け軸に描かれてきた猫を一堂に集め、2月22日猫の日スタートで開催しました。お越しいただいた方も、来られなかった方もこちらの特集で「猫れくしょん」をお楽しみください!
展覧会情報
展覧会猫れくしょん2016
会期2016年2月22日(月)〜26日(金)
会場ぎゃらりい秋華洞
時間10:00〜18:00
備考会期中無休 入場無料
おもちゃ絵の猫

おもちゃ絵は図鑑のようにながめたり書き入れによるストーリーを楽しんだり、また、切ったり組み立てて遊んだりと当時の子供たちにとって格好の「おもちゃ」であり、メディアであった。

芳藤「新板猫の温泉」
芳藤「新板猫の温泉」
芳藤「新板猫の温泉」

猫のしぐさが可愛いおもちゃ絵。ちなみにここは「またたび湯」。
江戸時代銭湯は混浴で、洗い場から浴槽のしきりに柘榴口と呼ばれる板があり、それがくぐって湯に入った。
背中を流しているのは「三助」。銭湯で釜焚き、湯加減の調整、番台業務を助けていたところからこの名前がついたといわれる。風呂場で垢すりや髪隙などもした。

芳藤「志ん板猫の恋じ」
芳藤「志ん板猫の恋じ」
芳藤「志ん板猫の恋じ」

猫の痴話げんかを描いた大人向け?のおもちゃ絵。
駆け落ちした猫カップルの行く末は・・・。

歌川芳藤(うたがわ よしふじ)
文政11(1828)~明治20(1887)江戸から明治にかけての浮世絵師。国芳の弟子。開化絵のほか、おもちゃ絵の作例も多く、おもちゃ芳藤とも呼ばれていた。その中でも師匠の影響で「猫」のものが多かった。
化け猫
超絶技巧の猫
豊国Ⅲ「役者東海道 白須賀 猫塚」
豊国Ⅲ「役者東海道 白須賀 猫塚」

東海道の各宿場にちなむ役者と風景を描いた三代豊国のヒット作。白須賀宿(現静岡県湖西市)三代目尾上菊五郎の当たり役、「猫石の精」が描かれている。 「梅初春五十三駅」に登場する「猫石の精」は因幡之助らに正体を見破られて逃げ去り、白須賀宿となる。

超絶技巧!彫師の技
本作品は猫の毛を1ミリの中に3本彫り込む職人技で表現している。この超絶技巧でシリーズ一の傑作とも言われている。彫師は彫巳の(小泉巳之吉、当時18歳)、この彫りを生かすのが摺師。いかに髪の毛を潰さずに生かして摺る事が出来るか、摺師の腕が試される。摺り・住政。

化け猫のお約束
国芳「五十三駅 岡崎」
国芳「五十三駅 岡崎」

こちらの作品は歌舞伎「梅初春五十三駅」より、東海道五十三次岡崎宿で化け猫が出てくる場面を描いているか?老婆が油をなめると行燈に猫のシルエットが映ることで正体が現れる場面。手拭いをかぶって踊っている猫は「猫が化けるとしっぽが二股に裂け、手ぬぐいをかぶって人間のように振舞う」という「猫又伝説」(ねこまたでんせつ)があり、それに基づいていると考えられる「尾が裂き」(岡崎)のごろ合わせでもあるか?化け猫が題材になっている歌舞伎は多い。
それぞれ微妙に筋やシチュエーションが違うが、十二単を着た老婆が油をなめる、その姿が行燈に猫の姿となって映るのは共通している。

浮世絵界一の猫マニア 国芳

いつも複数の猫を飼い、懐に猫を入れて絵を描いていたという国芳。愛猫が死んだ際には戒名をつけ、位牌を用意したという言い伝えがあるほどの筋金入りの猫マニア。 猫を擬人化した作品を多く残しており、普段から猫を観察しているせいか、現代の獣医学、動物行動学からみてもうなずける点の多いという。

嘘真言心之裏表
国芳「嘘真言心之裏表」
国芳「嘘真言心之裏表」

真言は普通、「誠」と書き、嘘いつわりのないことを指す。この場合本音だろうか。上の部分に嘘(建前)と言(本音)を書いてある。 真言「こんな魚をよこして、今時分礼でもあるまい。今まで一向に挨拶もなく、魚など貰いたくない。それそれ猫に気をつけなよ」  相手からなかなか挨拶がなく、腹立たしく思っていたところへ魚を届けて来たので、今頃になってと文句を言うかわりに、心にもないお礼を言っている場面。

歌川国芳(うたがわ くによし)
寛政9年(1797)~文久元年(1861)
浮世絵師。画号に一勇斎・採芳舎・朝桜楼などがある。江戸日本橋にて染物屋の子として生まれたが、文化末年から 初代豊国 の門人となり、 役者絵 ・挿絵などを描き始める。文政末年より描き始めた錦絵「通俗水滸伝豪傑」シリーズで人気が急騰。以後「 武者絵 の 国芳 」として評判を得る。柴田是真にも学んだとされ、天保期には 洋風 風景画 も手がけるようになり、また 戯画 の豊かな発想から幕末の奇才と呼ばれる。
弟子もやっぱり猫が好き!

国芳の猫好きは有名だが、身近にいつも猫がいたせいか、国芳の弟子たちも猫好きや猫を書くことが得意な弟子が多かった。おもちゃ絵の芳藤、月岡芳年もその例。

芳年「古今比売鑑 薄雲」
芳年「古今比売鑑 薄雲」
芳年「古今比売鑑 薄雲」

薄雲太夫とその愛猫を描く。芳年自身も大変な猫好きとして知られており、遊女の簪飾りや着物の柄にまで猫があしらわれている。

銀座かなめ屋さんで猫かんざしを復刻!
べっ甲かんざし・髪飾り・和装小物の専門店 銀座かなめ屋さんが、こちらの 芳年「古今比売鑑 薄雲」の猫かんざしを復刻しています。腕利きのべっ甲職人に依頼して2年近くかけて制作しました。

関連リンク:猫かんざし2018|浮世絵師、芳年が描いたべっ甲猫簪を復刻。

月岡芳年(つきおか よしとし)
天保10年(1839)~明治25年(1892)浮世絵師。国芳の門人。幕末期には 武者絵 ・ 役者絵 ・ 美人画 など 国芳 風を脱皮に努め、残酷趣味の 無惨絵 など時代風潮を反映した作品を多く描き、「血まみれ 芳年 」などと呼ばれた。明治時代には新聞錦絵の制作で活躍。当時、没落していく浮世絵師の中で最も成功した。
猫の画家 藤田嗣治
藤田嗣治 『猫の本』より「アラシェル」
藤田嗣治 『猫の本』より「アラシェル」
藤田嗣治 『猫の本』より「アラシェル」

藤田嗣治の画集『猫の本』に収録された、「猫12枚」シリーズの1点。猫の名前が各タイトルとなっている。本作のアラシェルとは、地獄の最下層に棲んでいるとされる暗黒の神の名前(?)。実はとんでもない悪戯者なのでだろうか。

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浮世絵ぎゃらりい秋華洞