池永康晟作品展『白い花』
2024年5月24日（金）〜6月1日（土）
2018-12-14日本美術そうだったのか通信
Vol.387 【中原亜梨沙個展】絶賛閉展間近！＆難しくて楽しい伊藤晴雨の世界【その4】
まずは、ぎゃらりい秋華洞で開催中の
【中原亜梨沙個展】の状況をご案内します。
今週末で12月16日(日)で閉展となります【中原亜梨沙個展】
ありがたいことに、画廊内は大盛況！作品は完売となりました。
この土日が観覧の最後のチャンスです。
の銀ブラの際は是非お立ち寄りくださいませ！
現在ご購入できる作品はありませんが、
新作も掲載した『中原亜梨沙作品集』（800円）を
会場で販売しておりますので、どうぞ手にとって御覧くださいませ
書店では販売していない秋華洞でのオリジナル作品集となります。
弊社HPでも販売中です↓↓
https://jp.japanese-finearts.c
【会期】2018年12月7日(金）～16日(日)
【場所】ぎゃらりい秋華洞
【時間】10:00～18:00 会期中無休 入場無料
詳細はこちら↓↓
https://www.syukado.jp/feature
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■今回の「そうだったのか！」━━━━━━━━━━━━━・・・
長々と連載しておりました
「難しくて楽しい伊藤晴雨の世界」の【その４】最終回をお送りし
【前回】https://www.syukado.jp/sod
こちらのお作品をご覧になりながらお楽しみくださいませ。
https://www.syukado.jp/list/it
前々回 vol.385、では本紙のモチーフのうち、
・【左下】赤い髪、青海波模様の袴をつけて寝転んだ『猩々』。
・【左の中央】「吉原細見」を持って着流し姿のカラスは『明烏』
・【左中央】で目隠した人物は『仮名手本忠臣蔵』の大石内蔵助（
・【右中央】おおきな斧を持った『積恋雪関扉』の関兵衛こと、実
・【右中央】で、後ろ向きで大盃を持ってるのは、『大杯觴酒戦強
（おおさかづきしゅせんのつわもの）の足軽、原才助こと、実は馬
前回vol.386
・【右中央】には、桶？を置いて頬杖ついている人物は「狂言」に
・【左下】大きな盃で酒を飲む亀と老人は『浦島太郎』と古典落語
・【右下】瓢箪の前の老人は「瓢箪から駒」の語源ともなった「張
と合わせて8点のモティーフを検証したところです。。
徐々に解釈が苦しくなってきましたが、残りの難問に挑んで参りま
では、【右下】半身が瓢箪に隠れた人物。
特徴的なのは背中に染め抜かれた「丸に二つ引」の家紋。
古くから伝わる「引両紋」の内、「丸に二つ引」の家紋は、
室町幕府を開いた足利氏が使用したことで有名。将軍家の権威の象
同様に足利家が使用した、ちょっとデザインが異なる「足利二つ引
足利氏といえば、今まで判明した題材の中に関係があるものを発見
そう、『仮名手本忠臣蔵』の左兵衛督直義（足利直義）です。
さて、物語の始まりは「大序（第一段）」「鶴ケ岡」の段。
ときは、将軍足利尊氏が新田義貞を討ち滅ぼし、南北朝の動乱が沈
鎌倉の鶴岡八幡宮では社殿の造替を済ませ、左兵衛督直義が
兄尊氏の代参として鶴岡八幡へと参詣するところです。
「丸に二つ引」の幕を張った馬場先の直義が鎮座して、
鎌倉在住の執事職高武蔵守師直と饗応役として塩冶判官高定が控え
この場で塩冶判官の妻「かほよ」に師直がしつこく言寄ったことが
後の塩冶判官による師直の刃傷事件へと繋がります。
公の場で師直を切りつけたことにより、判官は切腹。
塩冶家はお取り潰しになり、家臣の大星由良之助の仇討ちへと続き
以下の浮世絵からも大序の舞台「丸に二つ引」の足利文の幕が張ら
（↓↓「TOKYO DIGITAL MUSEUM」さんに繋がります↓↓)
広重《忠臣蔵 大序》
http://digitalmuseum.rekibun.o
（↓↓「早稲田大学文化資源データーベース」さんに繋がります↓
三代豊国《忠臣蔵 大序》
https://archive.waseda.jp/arch
どうやら構図も目隠しした大星由良之助から、逃げ隠れているよう
実際の仇敵は足利家ではなく高師直ですが、『忠臣蔵』の物語を
より象徴しているようです。
続けて最も奇妙な部分、
【左上】の手足が生えた蔵？が魚を前にお猪口を掲げている図を考
「魚を肴に蔵がお酒を飲む」ということわざや逸話があるのでしょ
ところで「蔵」…といえばどうしても『忠臣蔵』、「大石内蔵助」
しかしながら、それだけではどうにもしっくり解決しません。
まずは『忠臣蔵』、「大石内蔵助」について調べ直してしてみまし
すると、大石内蔵助が読んだ歌に魚が出てきます。
「濁りえの にごりに魚はひそむとも などかわせみの とらでおくべき」
これは、前述の大石内蔵助が仇討ちの本心を吉良側に悟られまいと
放蕩に明け暮れている振りをしている時期に、
カワセミの絵に賛を書いてほしいと頼まれ、読んだとのこと。
「どんなに濁った水の中に魚が潜んでいたとしても、
カワセミは必ずその魚を捕らえる」というこの歌には、
魚を吉良上野介にみたて、屋敷の中に逃げ隠れしている吉良であっ
必ず我らが首を捕るという、決意の意味で解釈されています。
ふだんは腑抜けのふりをしていても、仇討の心を忘れていなかった
本心が透けて見えるこの歌。良いが冷めた内蔵助はあわてて買い取
ちなみに京都市東山区にある来迎院の茶室含翠軒は、大石内蔵助が
（現在は大正時代に上坂浅次郎氏によって建て替えられたもの）
ここには内蔵助が描いた「翡翠の図」（翡翠＝カワセミ）が収めら
そして、赤穂市総務部市史編さん室編集の『忠臣蔵 第三巻』（昭和62年）に
泉岳寺の僧から聞き取ったという、討ち入り後の赤穂浪士様子を収
『義士実録』（姫路市立図書館所蔵）が掲載されています。
「扨食の上にて酒出し被申候処、何も心よく酒呑被申候、御出家衆
肴無御坐候得共御酒まいり候得と挨拶被致候得は皆々被申候は何も
是程之肴は無御坐候と首之入り候箱を指さし酒飲被申候由」（一部
「「肴はないがといって酒も出た。「肴は要らぬ」。首の入った箱
「これほどの肴はない」といいながら快く飲んだ。」
『忠臣蔵 第一巻』（赤穂市総務部市史編さん室、平成元年）（一部引用）
つまり、討ち入りの後、泉岳寺の集った赤穂浪士たちは、吉良の首
酒をのんだということです。
この資料と、内蔵助の歌を合わせると、この絵にぴったりだとも思
この吉良の首を肴にするエピソードが、伊藤晴雨の活躍した時代に
浸透していたのかは疑問の残る所。
『仮名手本忠臣蔵』にもありませんし、当時の講談の台本を読んで
私が調べた程度では、大衆の目に触れる書籍や芸能には見つかりま
大きな謎を残してすっきりしない、なんとも歯がゆい思いを抱えた
検証ではありますが、一考察としてご紹介いたしました。
皆さんならこの奇妙な絵をどの様に解釈されるでしょう？
どんなに研究しても、考察してもその上を行く含みをもった晴雨の
しかしそれこそが、いつ見ても、いつまで見ても楽しめる晴雨作品
カタログ編集者を悩ませる、難しくも楽しい晴雨の画業。
その一端が、皆様に伝わりましたでしょうか。
長々とお付き合いいただきましてありがとうございます。
ということで、本日は12月14日。討ち入りの日でございます。
『忠臣蔵』は長く師走を飾る伝統の物語。
年末は日本文化に思いを馳せてみるのもいいかもしれません。
そして、この時期はお酒を召されることも多いかとおもいます。
そのときにはこの伊藤晴雨の「酒」にちなんだ一幅を思い出して、
どうぞ楽しいお酒の席となりますように願っております。
本年もありがとうございました。
秋華洞の年末年始のお知らせです。
2018年12月28日から2016年1月6日まで、冬季休業い
新年が7日（月）からの営業となります。どうぞ、よろしくお願い
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