2019-09-04日本美術そうだったのか通信
Vol.392 【artKYOTO 2019】出展の知らせと、会場・二条城の障壁画

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日本美術のホットニュース、業界裏話など、日本美術をより楽しむための情報を
お届けします。株式会社秋華洞提供。
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★★ まずは近々の企画展情報から ★★

国内では関東近郊での企画展が多い秋華洞ですが、
今回は京都、世界遺産元離宮二条城にて開催されますartKYOTOに
出展いたします。これを機会に今週末はぜひとも足をお運びくださいませ。

さて、artKYOTOは世界遺産元離宮二条城を舞台に、古美術から現代美術までの
厳選された出展ギャラリーがそれぞれの審美眼に基づいたアート作品を
出展するアートフェアです。

千年を超えて日本の都であった歴史を背景に、文化の発信地として
革新を続けてきた京都で、新たな価値創造を担うプレミアムショーケースを
ご堪能ください。

秋華洞ブース【D03】では『仙』をコンセプトに服部しほりの日本画と、
乃村拓郎の現代アートのインスタレーション。
そして、秋華洞コレクションから古画も展示します。
新旧の芸術家のコラボレーション。どうぞお楽しみくださいませ。

会期 2019年9月7日(土)~9日(月)
会場 京都・二条城
時間 7日(土) 11:00-20:00
8日(日) 11:00-20:00
9日(月) 11:00-16:00
備考 一般 前売券:2,500円、当日券:3,000円
学生 前売券:1,500円、当日券:2,000円
※二条城への入城料は含まれておりません。
※小学生以下は大人同伴の場合に限り、artKYOTOへの入場無料。
※学生チケットは、9月9日月曜日限定の販売です。

詳細はこちらから↓↓
https://www.syukado.jp/exhibition/artkyoto_2019/

公式サイトもご覧くださいませ。
https://artkyoto.jp/

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続きまして、二条城観光のちょっとしたポイント
★★ 二条城の美術品にまつわる、「そうだったのか」 ★★をご案内。

関ヶ原の戦いで勝利した徳川家康によって、京都御所の守護と
上洛時の宿所として建築され、慶長8(1603)年に完成した二条城。
その後、慶応3(1867)年に15代将軍慶喜が政権を朝廷に返上する
大政奉還が行われるまで、まさに徳川幕府200年の栄枯盛衰を
見守った歴史的建造物です。
1994年には古都京都の文化財として世界文化遺産に登録されました。

贅を凝らした建築はその趣向、欄間彫刻や飾金具、調度品にいれるまで
思わず感嘆の声を上げてしまいますが、この絢爛豪華な城を彩るのは
なんと言っても、二の丸御殿に施された3,000面を超える障壁画の見事さ。
桃山様式の遺風を今に伝える障壁画はそのおよそ三分の一の
1,000面以上が国の重要文化財という、凄まじい作品群です。
この壁面絵画をおいて、二条城の芸術は語れないでしょう。

この二の丸御殿は、三代将軍・家光時代、寛永期(1624-1626)に
後水尾天皇の二条城行幸に備えて、新築に近い改修を行っていて、
現代に残る障壁画もこの際に描かれたものと思われます。

この膨大な数の障壁画の制作したのは、幕府御用絵師として
画壇の頂点にあった狩野派一門です。そして、その中心となったのは、
当時20代半ばという若さで活躍した狩野探幽と5才年下の弟尚信でした。

探幽は400年続くという狩野派の歴史の中でも早熟の天才として名高く、
11才の時には家康に謁見し、16才で御用絵師として江戸に召され、
江戸に移り住んで以降、鍛冶橋狩野家を興して江戸狩野派の祖となります。
弟尚信は現存する作品数は少ないものの、湿潤な墨調と装飾的な花鳥画を
得意として、二条城では二の丸御殿黒書院の障壁画を手掛けています。

さて、二条城。奥へ行くほど将軍の私的な空間になっていきます。
そこを飾る壁面に、狩野派の絵師たちは、幕府の意向や、将軍の体面、
吉祥の考え方などをうまく組み込み、その出来上がった作品の見事さに、
狩野派の芸術性を世にいっそう世間に知らしめることとなりました

例えば、「車寄」から入城して、「遠侍(とおざむらい)」には
狩野永徳の甥にあたる甚之丞筆とされる虎と豹の絵が。

次に大名が老中などと挨拶を交わすための応接間である「式台の間」には
探幽作もしくは山楽作とされる松が。
(ただし、老中の間は興以の作とされています)

その奥、「大広間」には一の間、二の間に展開する探幽筆の圧巻の《松孔雀図》。
大広間の4つの間にはすべて堂々たる太い松が描かれ、徳川の権威と、
その常緑樹の緑は変わることのない繁栄を表しているのですが、
15代徳川慶喜が諸大名を前に大政奉還の決意を伝えたのが、
まさにこの場所ですから…なんと言いますか諸行無常…。

そして、四の間の《松鷹図》は二条城内でもっとも有名な作品。
勇猛な鷹はもちろん吉祥の象徴でもありますが、
大の鷹狩好きで知られる家康への意向も感じてしまいますね。
(よく家康の像は腕に鷹をとまらせてますよね)
その《松鷹図》の制作にあたった絵師は狩野永徳の技法を踏襲した探幽作説と、
永徳の高弟である山楽作とする説とがありますが、現在ではどうやら
山楽説が優勢となってきたようです。
もともと、こうした御殿の障壁画には絵師は落款を入れないのが通例、
さらに狩野派一門の制作ですので、絵師の特定は容易ではありません。
研究が進むにつれて新たな発見があったり、従来の定説が覆ったり、
といったところも美術研究の醍醐味ですね。

奥に進むと将軍と親藩の家臣や公家が使う、大広間よりさらに私的な
応接室というような位置づけの「黒書院」。
ここは前述の通り、探幽の弟尚信が手掛けた雪をわずかにかぶった松、
桜や牡丹といった季節の移り変わりを感じさせる美しい障壁画を描いています。

さらに奥に進むと「白書院」。ここは「御座の間」と呼ばれ、将軍の居間や
寝所にあたる部屋のようです。
将軍も心を落ち着かせる居間にふさわしく障壁画は水墨山水が描かれています。
以前は水墨画の遺作が多いことから、探幽、尚信の養父的存在であった興以の筆
とされていましたが、近年は画風や狩野派の序列的に狩野永徳の弟長信の筆
という説が有力になっています。

そうです、この二条城二の丸御殿の絵師ごとの担当は、狩野派の一門内部の
序列が反映されているのです。

最も目立つ大広間とその周辺は、制作の中心となった探幽と尚信が、
奥に進むごとに探幽達より一世代前の狩野派の重鎮が、
玄関付近は弟子筋が…と言った具合。

徳川の思惑だけでなく、狩野派の思惑も複雑に絡み合った障壁画。
ただただ圧巻の見応えだけでなく、調べるほどの奥深い麗しき御殿です。

それでは最後に、数ある障壁画のうち、玄関に近い来殿者が控える部屋として
使われる「遠侍(とおざむらい)」と呼ばれる部屋の襖絵一点ご紹介。

二の丸御殿の遠侍は「一の間」から「三の間」まであり、すべての部屋に
《竹林群虎図》が描かれていることから、「虎の間」とも呼ばれていてます。
描いたのは狩野永徳の甥にあたる甚之丞。
将軍や老中に謁見するのを待つ、控室である遠侍に描かれた「虎」は、
来殿者を威嚇し、徳川の権威を誇示する意図があると言われています。
(名古屋城にも遠侍には虎が描かれています。)

現代に生きる私達の目にはトラの姿はユーモラスにも少々可愛くも
見えてしまうため、大名や武士達を威嚇できるかというと甚だ疑問なのですが、
そこは写真もデレビもない江戸時代の、実際の虎もみたことのない古人たち。
稀代の絵師達が描いた生き生きとした猛獣の姿は、恐ろしくも、厳かに
写ったのではないでしょうか。

ところで、虎と一緒の豹が描かれているのですが、その理由の一つには、
虎を見たことのない昔の人々は、斑点模様の豹はメスの虎だと思って
いたという、ちょっとほっこりする勘違いがあります。

そして、この部屋の最も有名なエピソードと言えば、慶長16年(1611)に徳川家康と
豊臣秀吉の子、秀頼の対面したのが、この「遠侍」の三の間ということ。
家康はこのとき、豊臣家を滅ぼす「大阪の陣」を決意したとも言われているそうです。
この時はまだ二条城は大改修前、襖は今の虎の絵ではなかったのですが、
来殿者と威圧的に対面する用途は変わっていないのかもしれませんね。

現在の二条城の障壁画は経年に寄る劣化を避けるために、復元模写が
展示されています。江戸当時の作品は美術館などの企画展で、お目見えする
機会ごとにお楽しみただるかと思いますが、もちろん模写作品も精巧ですので、
見応え充分。建築物とともにその空間のなかで鑑賞できる分、臨場感たっぷりです。

といったところで、長くなりましたので、今回のメルマガは終わりにいたします。

歴史と伝統に彩られた二条城、普段は入れないという「台所」にて
行われる【 artKYOTO 】。

新旧の芸術家のコラボレーションをお楽しみいただける貴重な機会
味わっていただきたく、皆様のご来殿をお待ちしております!!

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