池永康晟個展「少女より始むる」
2026年1月10日(土)〜27日(火)

モノプリントによる版画制作を展開する小林夏美は、確かな経験をもとにしながらも記憶や感覚を抽象化し、主に描画を用いて定着させることを試みています。
松田啓佑は、理性的な構造としての絵画とは異なるアプローチで、色彩やストロークを通じた絵画表現に取り組んでいます。
一見、極度に抽象化されたかのように見える両者の作品ですが、転写や色面構成により、かつて捉えたイメージの境界を露わにする行為は、線的性質にとどまらないドローイング像を提示してくれるのではないでしょうか。
また、こうした刷る・描く・擦る・剥がすといった一連の行為の痕跡は、視覚イメージを超え、事物同士が関わりあう中で偶然に生まれた、“状況”でもあります。
「素描」という従来の括りにとらわれず、線を核とした表現を広く「ドローイング」として捉えることで、秩序だった手順にしばられない、不定形のイメージが生まれてくる瞬間を観測したいと思います。

