この度、ぎゃらりい秋華洞では、遠藤仁美、忠田愛、香月泰男の3人展「命をなでる」を開催いたします。
この度、ぎゃらりい秋華洞では、遠藤仁美、忠田愛、香月泰男の3人展「命をなでる」を開催いたします。

展覧会情報
展覧会三人展 香月泰男、遠藤仁美、忠田愛「命をなでる」
会期2025年1月24日(金)〜2月1日(土)
会場ぎゃらりい秋華洞
時間10:00〜18:00
備考会期中無休 入場無料

表面的に明るい作品ばかりがもてはやされる昨今ですが、一方で私達は生きること自体を真底から勇気づけてくれる切実な何かを、表現に求め続けているようにも思われます。この展示はそのことに応えるものとして企画されました。

香月泰男は戦後シベリヤに抑留されて、多くの仲間達が命を落としていく中で生き延びて、山口県の自宅に戻ったあとは、土色と墨色の絵肌を削るようにして、死した仲間たちを、そして生きる花や動物たちを描きました。

もうあの戦争は80年も前の出来事ですが、過酷な現実のなかに生きる喜びを見出す彼の作品は、今も変わらず、生命の原点を伝えています。

香月泰男「花火」
香月泰男「花火」

その香月の作品に出会って、同志社文学部から京都造形大に転じた忠田愛は、「いのち」を絵画で描きたいという強い欲求に導かれて芸術の道を歩んできました。人物や動物を土のような地肌の支持体に描く彼女の作品は、力強さと脆さが同居しており、香月の作品がもたらした重みを彼女の肉体を通してさらに次の世代につないでいこうとする試みにも思われます。

 

忠田愛「Ram」(2024)
忠田愛「Ram」(2024)
遠藤仁美「森の探し物」(2024)
遠藤仁美「森の探し物」(2024)

遠藤仁美は夢となって現れた記憶を幾重にも重ねて表現することで、理想のなにか、おそらくは家族のようなものを夢見て生きる力を見出す試みのように見えます。

ふたりの作品に共通することは、生と死のはざまにある「本当の生命」のようなものを掴み取ろうとすることであり、さらにそれらは「家族」の温もりについて語っているようにも思われます。

「いのち」と「家族」。

それは今この社会に求められるもっとも大事なテーマではないでしょうか。

香月、忠田、遠藤の三人の作品が、生きることそのものに触れるものとして、みなさんの心に届くことを祈っています。

2025年は、すべてのものが冬から春に転じ、芽吹き、伸びゆく年になると思います。その季節にふさわしい希望の展示になることを信じています。

忠田 愛(ちゅうだ あい)
1981年大阪府生まれ。2007年に京都造形芸術大学大学院を修了し、修了制作展で混沌賞および大学院長賞を受賞。その後、「京都日本画新展」優秀賞や平和堂財団新進芸術家奨励賞など数々の賞を受けている。彼女の作品は、命の神秘性や永続的な生命の本質を描き出す独特な表現が特徴であり、日常の一瞬に宿る儚さと輝きを捉えている。その視点と表現力は国内外で高く評価され、観る者に深い感動と余韻を与える。現代絵画の新たな価値を創出するアーティストとして注目されている。
遠藤 仁美(えんどう ひとみ)
1990年埼玉県生まれ。2019年に東京造形大学美術学科卒業。『第33回日洋展』『世界絵画大賞展』『FACE展』受賞。2022年には美術新人賞『デビュー2022』でグランプリ。個展『今日も馬は夢を見る』を開催。同年『Idemitsu Art Award2022』入選。2023年には弊社『muni Art Award2023』で審査員賞。幻想的で深みのある表現が高く評価されている。風景画を通じて内面を描く独自のスタイルが特徴で、繊細な色彩と複雑なレイヤー構造が独特の輝きを生み出し、観る者を魅了する。次世代を代表するアーティストとして注目されている。
香月泰男(かづき やすお)
かづき・やすお 明治44(1911)山口~昭和49(1974) 洋画家。東京美術学校(現:東京芸術大学)在学中から国画会に出品、同人となる。昭和18年に召集され満州へ。捕虜としてシベリアに抑留され同22年に復員、この体験が「シベリア・シリーズ」の原点となった。日本芸術大賞受賞、新文展特選。