2005-04-28日本美術そうだったのか通信
Vol.46 ブレードランナー仮説

□■□■  「日本美術そうだったのか通信」 Vol.46
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アートオフィスJC・秋華洞提供。
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みなさんこんにちは、お元気ですか。
アートオフィスJC・秋華洞の田中千秋です。

ニューヨークの件では、いくつかお便りをいただきました。有難うございま
した。これからも実感に即したレポートを行っていきたいと思います。よろ
しくお願いします。

突然ですが、外国から来た人が日本で一番驚くのが、サービスの良さだそう
です。まあ「外国」という言い方はかなりおおざっぱな話ですが、私は、ア
メリカから日本に帰ってきたときにそれを実感しました。

先週一週間ほど滞在したニューヨークでは、客商売だからといって必ずしも
丁重な扱いが受けられるとは限りませんでした。そんなことは、むしろ稀
(まれ)かもしれません。ましてや、いわゆる「気が付く」サービスなどは
皆無といって良かったと思います。

高級、と呼ばれる所でもそう感じました。一方、日本では、たとえば駅の
Kioskのおばさんでも、なんとなしに気配りを感じることがあります。タク
シーに乗っても、レストランでも、ある種の丁寧さは当たり前にあるように
思います。

私は、空港からの帰りにタクシーに乗ったのですが、ああもうこれ、NYの
タクシーと比べたら天国でした(ちょっと大げさ)。

こうした丁重さなり、気配りなり、というものは、日本人が江戸社会いらい?
自然身につけた文化というべきものかもしれません。

これまた突然ですが、私は、秘かに、アメリカ文化をレプリカントの文化だ、
という説を唱えています。レプリカントとは、映画ブレードランナーに登場
する一種の「ロボット」の様なものです。

※ブレードランナーとは、1982年制作、ハリソン・フォード主演、リドリー
スコット監督の歴史に残る最高のSF映画です。
参考:ブレードランナー(WikiPedia)
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40swvry0c80s518gx3
(以下、記憶に頼っているので、内容の詳細は間違っているかもしれません)

さてこの人造人間「レプリカント」は、運動能力、思考能力は人間をしのぎ、
人間以上の存在なのですが、彼らにはないものがあります。それが「記憶」
なのです。

レプリカントたちは、何故か、人間のアルバムから写真を盗み、集めます。
親子の写真、兄弟の写真。高度な知性と感受性には、「記憶」がないことが
耐えられないのでしょう。寡黙なレプリカントの切実さが心に残ります。

原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を書いたシカゴ生まれのフィ
リップ・K・ディックがレプリカントをアメリカのメタファーと意識したか
はともかく、私は例えばボストン美術館に世界中の美術品を集め、日本美術
や中国美術に関しては、もしかしたら本国人以上の情熱で研究する「アメリ
カ」に、「歴史」のない(もしくは非常に短い)国が、切実に「歴史」をも
とめる姿を感じるのです。

(これを私は心の中でブレードランナー仮説と名付けています。)

ほとんど無意識に享受しているこの日本的な「人当たり」も、ながい歴史を
経て受け継がれた日本人の「文化」として、あんがい貴重なものかもしれな
い、などと考えたり致します。

司馬遼太郎の「アメリカ素描」という本がありますが、このなかで、司馬は、
おおよそ次のように述べています。

人工国家アメリカは、誰にでも参加できる普遍性という「文明」だけ,
でできている。一方、ある種の慣習性の総体として、人をあたたたかく包み
込む(ときには息苦しくもあるが)ものとしての「文化」がアメリカ以外の
国を大きく雲のように覆っている。               ~~~~

アメリカでは、よその国からその「文化」を、より上手に取り込んだ人が、
のっぺりとしたアメリカ人にならないで、より人間らしい豊かさを持つこと
に成功している。

具体的な例として、ドイツ文化や、日本文化を家庭に持ち込んでいる家族が
紹介されます。

参考:司馬遼太郎「アメリカ素描」(Amazon.co.jp)
http://k.d.cbz.jp/t/h4vn/40swwry0c80s518gx3

ふだんの生活感覚では、より便利なものを追い求めて、あまり「文化」とい
うことなど、ことさらに感じたり考えたりしませんが、このメルマガのテー
マに即して言えば、この「文化」の源流にあるものを探り当て、伝えていく
意味合いが「日本美術」にもあるのだろう、と考えます。

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今週の新入荷情報
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■ 伊藤小坡『春の野』
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伊藤小坡は宇田荻邨と共に三重県を代表とする作家です。

近代日本画のなかで、美人画の絵描きとして、もっともビッグネームといっ
ていいのが、鏑木清方、上村松園、伊東深水、の3つの名前ですが、明治に
生まれ、昭和に亡くなった位の同じ時代の作家で、次の来る第二グループの
上位の一人がこの伊藤小坡といっていいのではないでしょうか。

殆ど同年齢で、一時期しのぎを削ったといってもいい、松園と同様、美人画
といっても、女性らしい生活の実感に基づいた、細々とした観察眼があるの
が伊藤小坡の絵の特徴でしょう。

本図でも、女性が、摘んだ草を手にしていますが、右手の籠に草がすでにた
くさん摘まれていることが分かります。桜咲く野に春の草を摘みにきたので
しょうか。ちょっと女性らしい着想ですね。

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