2015-05-21日本美術そうだったのか通信
Vol.361 「銀座の夜会」と『美人画考』展

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お届けします。株式会社秋華洞提供。
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■今週の「そうだったのか!」━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥……..

銀座の夜会と『美人画考』展

毎年恒例になりましたイベント「画廊の夜会」と、
ぎゃらりい秋華洞『美人画考』展のおしらせです。

2015年5月22日(金)17:00-21:00より恒例になりましたイベント
「画廊の夜会」が開催されます。↓↓
http://www.ginza-galleries.com/yakai.html

それに伴いまして、ぎゃらりい秋華洞では企画展を催します。

★★★『美人画考』展★★★
http://syukado.jp/feature/2015/05/bijingako.html

銀座の画廊「秋華洞」では、
これまでにも浮世絵から現代作家の作品まで、時代を問わず
美人画の展覧会を開催してきました。
今回は甲斐庄楠音のコレクションを中心に展示します。
また、現代の美人画として
池永康晟さんの「期待・ゆう」の特別展示(非売品)もございます。

●展覧会期間
4月3日(金)~16日(木)
(平日10:00~18:00、日・祝11:00~18:00)

●会場
秋華洞内「ぎゃらりい秋華洞」
東京都中央区銀座6-4-8曽根ビル7F

※入場無料・展示販売いたします

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◆銀座の柳の下で

霧島昇が歌う『胸の振子』
 https://youtu.be/_D5_pbSWbyY

柳に燕はあなたと私、胸の振子がなるなる朝から今日も♪

この季節にぴったりな曲を口ずさむ方と銀座の路地裏で
スレ違いました。その紳士の銀座ボルドーあたりですっと消えて
しまい。銀座の柳が風にゆれて、一幅の書画を観るさまです。

パナマ帽の紳士がご婦人を夜の銀座へ、お連れになる御姿は
大正時代の写真を観る様です。お連れのご婦人はペパーミント色の
カクテルドレスをお召で暮れゆく街の灯に、青い光を放つ真珠のようです。
銀座100年前紳士淑女がゆったりと、歩調を合わせそぞろ
歩いておりました。ロイド眼鏡に長身の紳士は英吉利の
本パナマ帽に麻の背広で細めの黒いネクタイをしめています。
手には純銀製のヘッドに猟犬をあしらったステッキのシャフトは
スネークウッドとかなりの拘りが垣間見えます。
銀座のカフェに日参した作家で仏蘭西帰りの永井荷風ではないですか!
洋食のレストランにはどこに案内しようか、それとも新橋の
料理屋に寄ってみようか、ご婦人のドレスの色を見つめながら、
うれしい思案顔です。
柳の風がすっと流れる時に、女の薔薇のオードトワレがふっと馨り、
流行の七色のカクテルを呑んでみようかとカフェの女給に
ささやきます。夜会巻きの女はにこりと微笑み、銀座の装飾店で
プラチナ製の大振りで扇形の簪を「夜会巻」に挿すのが、山の手の
ご婦人方に流行しているので、もう一つ真珠もあしらった簪を、
荷風センセイにおねだりするつもりなのです。
荷風センセイの腕にぶら下がる様に甘える姿に道行く人は皆振り返ります。

明治大正期に、上流階級の女性たちの間で「夜会巻」という髪型が流行し、
昭和のはじめまで高く結い上げた鬢は和洋装ともに、日本の女を魅了しました。
最先端のファションに身を包んだ高級カフェタイガーの女給のSは、
何人の遊び好きの紳士をと同伴を頼んでいるのでしょうね。

小唄『青いガス灯』
青いガス灯ななめに受けて
白いえり足夜会巻
駅で別れたあの人の
影がちらつく雪もよい
ギヤマングラスで交わした酒に
凍える心あたためつ
帰るレンガの金春道を
素足に履いたあづま下駄

そんな大正モダンな時代、ひとりの画家が、京都画壇の話題をさらった。

21歳の洋行帰りの青年、その名は甲斐庄楠音。

大正4年第一回国画創作協会展に入選した《横櫛》は妖艶な微笑みをたたえ
女は絞りの半襟に、役者絵の紅い襦袢に、さらっと小袖を羽織っています。

「事」の終りか、「事」のはじまりか、
艶めかしく眼差しはしっとりと潤んでいます。

洋行中にダビンチの『モナリザ』に傾向したと言われる青年は日本画で
その微笑みを再現したのです。
モナリザはダビンチ本人の女装との一節もありますが、
甲斐庄も美しい青年でしたから、自らを写したのかもしれません。
映画のお好きな方なら、溝口健二監督の撮影に対する厳しさを
ご存じでしょうが。
京都で映画撮影中に、キャメラがパーンし、一面の銀世界。
比叡山には白い雪が一面に降り積もっていたのだが、スタッフに雪かきを
命じたエピソードも残されてます。この溝口監督が映画製作で
目を付けたのが画家の甲斐庄楠音でありました。
また、泉鏡花の原作を撮る時に日本画家で歌舞伎の舞台美術を手掛けた、
小村雪岱を時代考証舞台美術で使ったのですから、一流の仕事をする人は
一流の画家を愛したのでしょう。
溝口健二の傑作中の傑作は甲斐庄に『雨月物語』風俗交渉に
あたらせたのですから、いかに甲斐庄が美に五月蠅いかは、
甲斐庄が絵を描く時に参考にした、友人との女装写真が物語っています。

あの妖艶な映画は甲斐庄が無くては、撮れなかったのです。
二人の美学者がこだわり続けたものはすべて『雨月物語』に
集約されているので、まだ未見の方は、弊社で甲斐庄の絵を
ご覧になった後に、是非とも今日マチ子の『雨月物語』をご覧いただければ、
より一層絵画と映画の関係をご理解いただけると思います。

では、甲斐庄楠音の女をご観くださいませ。
女の心象風景をこんなにも写せたのは、江戸時代の「祇園井特」や
時代が下って吉原の遊女を描いた画家の「斎藤真一」、
人形作家の「辻村寿三郎」くらいではないでしょうか。

女の道の険しくも太い路。

それらを感性豊かに昇華させてくれたのではないでしょうか。
独身のスタッフである、わたくしの様な四十路女は
甲斐荘の女たちにとても共感できるから不思議です。

甲斐庄を知る事は女を知る事と。

わたくしどもの画廊では貴重な甲斐庄楠音を10点近く展示致します。
是非是非、初夏の夜にそぞろ歩きに、お出かけくださいませ。
きっと大正時代に時間旅行もできますから。

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★更新情報★
・銀座の画廊で働く社長ブログ
…「美人画考展によせて、甲斐庄楠音のため息」
http://www.aojc.co.jp/blog/2015/05/post-282.html
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・秋華洞スタッフブログ…
…「美人画考」乞うご期待!
http://www.aojc.co.jp/staff_blog/2015/05/post-375.html
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・浮世絵サイト…新着情報
 小林清親「明治十四年二月十一日夜大火 久松町ニ而見る出火」
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Kiyochika/Great-Fire-at-Hisamatsucho-on-February-11–1881
 芳年「風俗三十ニ相の内 あったかそう」
http://jp.japanese-finearts.com/item/list2/A08-274/Yoshitoshi/Thirty-two-
Aspects-of-Women–Looks-warm.
 広重「魚づくし かながしら、鰈に笹」
http://jp.japanese-finearts.com/item/list2/A1-90-176/Hiroshige/Grand-Series-of-
Fishes—Gurnard–Flounder-and–Bamboo-Leaf
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