2004-12-10日本美術そうだったのか通信
Vol.30 真贋について その5

□■□■  「日本美術そうだったのか通信」 Vol.30
発行 有限会社アートオフィスJC・秋華洞
http://aojc.co.jp/   アートオフィスJC
http://www.syukado.jp/ おんらいんぎゃらりい秋華洞
————————————————————
<本マガジンの説明>
日本美術の鑑賞界のホットニュース、古今国内東西の作家のエピソード、美術業界
裏話など、日本美術をより楽しむための情報をお届けします。
アートオフィスJC・秋華洞提供。
————————————————————

こんにちは、いつもお読み頂いて有難うございます。
アートオフィスJC・秋華洞の田中千秋です。

アートオフィスJCと秋華洞という二つの名前を持つ当店・弊社ですが、こ
ういう状態になったのは訳があります。

JCというのは、父の自知郎のイニシャルと私、千秋のCのイニシャルから
とりました。ごく一般的に美術商は「石川画廊」とか「花田美術」とか名前
をストレートに付けるケースが多いのですが、私どもですと、田中美術。田
中画廊。・・・他にもあるでしょうし、いかにも面白くも何ともない。

父の前のお店が「思文閣」となったのもこれと同じ経緯があったのかもしれ
ませんね。(こちらはなかなかいい名前ですが)

で、色々とない頭をひねったうえに、「アートオフィスJC」となった訳で
す。ま、自知郎千秋美術事務所。ということですね。JapaneseCu
ltureを扱う美術会社。という意味にもとれます。

ところが、同業者からはねえ、バカにされましたねえ、「自っちゃん※のと
このイメージと全然違うじゃないの、ダメだよ、自っちゃんのセンスでやっ
たら」。
いや、僕のセンスも入ってるんですけども。。。

※父は業界では「自っちゃん」と呼ばれているようです。なんか「じいちゃ
ん」みたいだし、若い人もジッチャン、と使うのを見ると、オヤジヲナメン
ナヨタコと思わんこともないですが、思わないようにしています、ハイ。

しかし時既に遅し。法人登録も、ウェブサイト開設も済んで、美術業会でも
「JCさん」として定着。(ジャパンカップさん?とか、わけのわからない
事も言われますが)

けれども、日本画と筆跡が得意の当店としては、買い取りは幅広くやります
ので兎も角、販売はイメージが曖昧。そこで、「秋華洞」となったわけです。

なんで、「秋華洞」なの?という点については、長くなってもなんですので、
次回。(内輪の詰まんない話でスミマセン)

————————————————————
今日の一枚
□ 橋本関雪 『渓山遊猿』
http://www.syukado.jp/jp/search/detail/artist/jp_b/HASHIMOTO_KANSETSU/S15-82.html
————————————————————
動物画を得意とした関雪の佳作です。猿が無邪気そうで、孤独にも見えます。
関雪の心境なのでしょうか。
箱書きが関雪らしい、堂々として味わいのある字ですね。
まずは当店でご覧下さい!
http://aojc.co.jp/corp/
価格  1,200,000円(税込)
作品は一点限りですので、ご用命はお早めにお願い致します。また、売り切
れの際はご容赦下さい。
————————————————————

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■□■□真贋について その5
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
その1
http://backnumber.cbz.jp/mmz/backnumber/h4vn/2004090618_2534027105318424.txt
その2
http://backnumber.cbz.jp/mmz/backnumber/h4vn/2004091611_2533028098387058.txt
その3
http://backnumber.cbz.jp/mmz/backnumber/h4vn/2004092117_2582028604326152.txt
その4
http://backnumber.cbz.jp/mmz/backnumber/h4vn/2004120312_2563756799376675.txt

前回までに、近代以降の日本作品(主に日本画と工芸品)の「共箱」につい
てご説明しました。

今回は、「鑑定証」ってなあに?というところから書いてみたいと思います。

いわゆる洋画、油絵はちょっと脇に置くとして、日本画、工芸品の場合は、
「共箱」があれば一応流通上の「本物」という事が担保される、という事に
ついては前回述べたとおりです。

明治期以降の作品でも、「共箱」が、ない場合があります。

たまたま、箱を無くした、作家が箱書き書く前に流通してしまった、作者の
死後、画室から作品となって流れた、単なる席画(お酒の席などの余興画)
など、のケースです。

これは流通の際、困ります。「商品」として人から人にわたるときの証明材
料がなくなっていまうためです。そのままでは、流通価値はガクッと下がる
ケースがあります。

そこで、作者本人が亡くなった後、必要であれば、作者の弟子や奥さん、子
供などが、「箱書き」をやるケースが出てきます。そもそも江戸時代の作品
は共箱が少なく、弟子や孫弟子が箱書きをやるケースが多いものでした。
(何故なのかはよくわかりません。勉強不足でご免なさい。)

日本画の「掛け軸」の時代から、額装の時代に伴って、「箱書」から「シー
ル」の時代に移ったのは前回説明しましたが、当然、弟子や肉親の「シール」
も出てくるようになっています。

さらに、作者が亡くなってしまって久しくなると、作者本人の側にいた弟子、
肉親も亡くなってしまい、「箱書き」「シール」を出す人がいなくなってし
まいます。

そこで最近、幾人かの作家に採用されているのが「鑑定委員会」方式です。
作家によって構成メンバーは違いますし、メンバーの内容は発表されないの
が普通ですが、その作家作品に精通して権威があるとされているメンバーが
数人の合議制で作品の真贋を判定します。たいていの場合、作品の写真と共
に、鑑定委員会発行の「鑑定証」が発行されるようになりました。

日本画の場合は、東京美術倶楽部の鑑定委員会、洋画の場合は、日動画廊や
洋画商協同組合を窓口とする各種鑑定委員会が、近頃は多くの作家の鑑定を
引き受けています。

(鑑定人と鑑定委員会の一覧はこちら)
http://www.aojc.co.jp/buy/courtier_j.html

整理すると、鑑定人(機関)には
・作者の弟子・肉親(妻・子・孫)
・各種鑑定委員会
・東京美術倶楽部
が、おおざっぱに言うとありまして、作家によって決まっています。

さてですねえ、鑑定証、証明証についてはちょっと注意するべき事がありま
す。上記のリンクに挙げた、いわゆる「所定鑑定人」または「機関」以外の
発行した鑑定証は、流通上の意味を持たない、という事です。

「鑑定証」は「銀行券」と似ています。「一万円」と書いている紙っぺらが、
「一万円」として流通するには、発行元が「日本銀行」であって、誰もが認
める、ということが重要です。この「誰もが認める」という点が極めて重要
で、そうした「権威」のあると「されている」所から発行されていない証明
書、は、はっきり言って、あまり意味がありません。

「鑑定証」があって、その作品のものに間違いなくて、鑑定証じたいが本物
で、その鑑定証が、「あそこが出したのなら間違いない」という威力が、多
くの美術商に共有意識として、ある、という事が必要なわけです。

もちろん、各画廊さんが発行することのある「証明書」もあるでしょうから、
これにケチを付けては問題がありますが、これは、「画廊」と「お客さん」
の間でだけ成立する本物の「お約束」であって、その画廊も、お客さんとも、
関係のない、第三者にわたるときは、この「証明書」はあまり意味がありま
せん。その「証明書」が第三者にも意味があるのは、今のところ日本では
「日動画廊」のシール位のものでしょう。ちなみにフランスではペトリデス
が有名ですね。

また、鑑定証発行には、真贋鑑定作業じたいに数万円、真筆と判断された場
合に、鑑定証発行手数料に数万円かかるのが普通です。東京美術倶楽部の場
合、3万、3万、で6万円かかります。

席画や色紙では、川合玉堂などの大家でも、数万〜10数万のものもありま
すから、鑑定証取得すると却って「足が出る」場合があります。

ですので、鑑定証取得には慎重に、最寄りの信頼の置ける美術商に相談され
てからなさった方がいいでしょう。(もちろん弊社でも無料にてご相談を引
き受けます。)

ちなみに、一応流通には「共箱」「共シール」があれば十分なのですが、駄
目押しで、「鑑定証」を取得するケースも増えてきました。数年前までは、
たとえば東京美術倶楽部では、「共箱」があれば「鑑定証」は不要、という
ことで断っていたと聞いています。けれども、とくに数千万の高額商品や、
超有名作家の「前書き」などについては、とにかく鑑定証をとっておく、と
いう流れもあるのでしょう。

なお、所定鑑定人の「鑑定証」が発行されるのは上記リンクに挙げた一握り
作家のみになります。
また、当たり前ですが、現存作家に「鑑定証」というものは存在しません。

(この稿、間違い(または偏見、凡ミス)等ありましたら是非ご指摘下さい)

本日は読んで下さいまして有難う御座います。
またお会いしましょう!

************************************************************************
ご意見、お待ちしています。このメールへの返信で私に届きます。
お返事は、本メルマガに掲載する場合があります。匿名希望の方、掲載はお
困りの方はその旨お書き添え下さい。
************************************************************************

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
★★「おんらいんぎゃらりい秋華洞」オープンしました!
http://www.syukado.jp/
☆★「秋華洞・丁稚ログ」新米美術商の赤裸々な日々
http://blog.livedoor.jp/syukado
美術品無料査定・買取致します。
http://aojc.co.jp/buy/index.html
☆☆「カタログ誌 秋華洞 秋号」無料配布中
http://aojc.co.jp/contact/catalog.cgi
「書画・絵画鑑定マニュアル」ご請求はこちら
http://aojc.co.jp/kantei/index.cgi

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行 有限会社アートオフィスJC
http://aojc.co.jp/ TEL 03-3569-3620
東京都中央区銀座6-4-8 曽根ビル7F
代表取締役 田中自知郎・田中千秋
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎ご意見、お問い合わせは、→ info@aojc.co.jp
(このメールへご返信下さい!)
◎バックナンバーはこちら →
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000138331
◎独自配信システムでのマガジン登録、変更、解除→
http://www.syukado.jp/jp/mailmag/
※本メールマガジン独自配信分はコンビーズメールの配信システムを利用し
ています。
http://www.combzmail.jp/ コンビーズメール
まぐまぐでの登録・解除→http://www.mag2.com/m/0000138331.htm
melmaでの登録・解除→http://www.melma.com/mag/70/m00124770/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━