2004-09-08日本美術そうだったのか通信
Vol.4 《日本美術そうだったのか通信》
ご機嫌いかがですか。
アートオフィスJC 田中千秋です。

 いやあ、すごい風ですね。
 昨日夜、有楽町マリオンをくぐり抜けるときなど、ちょうど時計
台の楽隊人形がせり出す、9時定刻にあたったのですが、からくり
が落ちてこないかと心配するほど。
 思わず足早に通路に飛び込んでしまいました。

 今朝も風はすごかったです。

 みなさんは、お怪我はありませんか?
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□■□■  「日本美術そうだったのか通信」       
□□■□  --新米画商の今日もよろめ記--  Vol.4 
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今日の一枚
□川合玉堂『跳躍』
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□(1)院展
□(2)今日の一枚
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■□■□ (1)院展
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東京、上野で開催中の院展に行ってきました。

今日はいち美術ファンとして書かせてもらいます。

 日展もそうですが、この「大画面主義」というのはもうやめても
いいのではないかと思います。図録に載っている絵よりも、実物に
接した方が、絵のディーテイルが粗く見えてしまい、幾分ガッカリ
してしまいます。

 今年の院展は全部「サムホール(はがき大)」でやります!なん
ていうこともあってもいいのではないでしょうか。(否、サムホー
ルは日本画では無茶ですね。一尺五寸の掛軸で競う、とか。。)

 そして、今に始まったことではないですが、兎に角、画面が申し
合わせたように隅から隅まで塗りつぶされてしまっている。余白の
美、という江戸期の日本画から「空気」を表わすとして没線(モッ
セン)描法を開発したのは大観・春草の功績だと思いますが、いつ
の間にか、絵の具が安いせいか?強迫的に塗りつぶすことが不文律
のようになってしまっているのは何故なのでしょう。

 そして、川合玉堂も福田豊四郎も横山大観も、みな表現を変えて
言っていますが、「日本画」の特徴は、見たままをそのまま書くの
でなく、写生は勿論するのだが、いったん写実的なそのままを壊し
て組み立て直して心に生じたもの、あるいは本物よりも本物らしい、
そのものを描くということだと思います。

 「写生」と「色面」に頼りすぎた構成をはなれて、独自の構成を
見いだす試みを、期待してはいけないのでしょうか。

私が危惧するのは、こうした絵を、何かのおつきあいで見て「日本
の絵ってこうなんだ、自分には『わからないや』」と思って「美術」
を通り過ぎる人が多いのではないかということです。

 私は、本当の美術は、人を感動させる力、あるいは楽しませる力、
または唸らせる「お宝パワー」を持っていると思っています。
 たとえば、この夏横浜そごうで行われた「足立美術館コレクショ
ン」に揃った橋本関雪、菱田春草、伊東深水等々の名品の画面の緻
密さ、緊張感は息詰る「強さ」がありました。
 あるいは、東京国立博物館で見た上村松園の「焔」の幽女の恐ろ
しさ、妖艶さ、と来たら、夜中はショーケースにお札を貼ったほう
がいいのではないかと心配になるほどでありました。

 正直なところ、この仕事を始めるまでは日本の美術にこうした素
晴らしい「宝」があることを知りませんでした。
 
 にもかかわらず、こうした展覧会の絵を見て、こんなものなのか
な、と美術の世界を「通り過ぎていく」人がいるとしたら、残念で
なりません。

 バブル時代の名画で高騰が騒がれたときも、興味の中心になるの
はゴッホ、ルノワール、レンブラントのヨーロッパ絵画だったよう
な気がします。

 しかし、日本には素晴らしい美術品があるのだと言うことを是非
知って頂きたいと思います。

 そして、現代の芸術家には「リアルタイム」にそうした、この4、
5百年の芸術と「拮抗」する作品を描くという「責務」がある事を
覚悟して頂きたいと思います。

 少なくとも、市場では、「現代」も「200年前」も、同時に取
引されます。レンタルビデオ屋で、小津安二郎「お早う」と、行定
勲「GO」のどちらを借りるか迷うことができるのと同じです。映
画よりもスパンは大分長い。。。全人類史と同じくらい長いわけで
すが。。。

 院展の参加者、若い芸術家も、図録冒頭に掲げてある、再興院展
の祖、怪仁大観の「無窮を追う」理想の原点をとらえ直してみては
どうだろうか、と思います。

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■□■□ (2)今日の一枚
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今日の一枚 川合玉堂『跳躍』
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 本日のご紹介するのは、一昨日ご紹介した川合玉堂の小品です。

「鵜飼」、すなわち、「川、岩、山、木々」の自然と「人、舟、漁
業」という人為の交歓を描く、というモチーフが玉堂の代表的なも
のですが、馬、鳥、猿など、単独の動物の画題も多く残しています。

本作は、「鯉の滝登り」の図で、実は同様のモチーフで、かなり枚
数を描いたようです。玉堂の鯉の特徴は、水の流れが必ず書き込ま
れていることではないかと思います。

 まな板の上に寝そべっている魚のような画題は、竹内栖鳳あたり
でしたら、何となく描きそうな題材ですが、玉堂の世界は、いつも、
厨房や食卓でなく、山野、河川のただなかなのです。

 同様の画題で、それぞれの鯉はあっちにはねたり、こっちにはね
たり、ひとつとして、同じ流れ、同じ向きの鯉はないようです。乞
われて描いた小品のように思えますが、丁寧にこなしていたのでし
ょう。

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川合玉堂『跳躍』
紙本・水墨・淡彩  軸装 
本紙 30x45 総丈 122x59 (cm) 
落款・印・共箱
価格   お問い合わせ下さい 
状態   画中上部にシミ 
当店作品は全て現品一点限りですので、ご用命はお早めにお願い致
します。また、売り切れの際はご容赦下さい。
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本日は読んで下さいまして有難う御座います。
また明日!


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