美人画の系譜Ⅱ|ART FAIR TOKYO 2025
2025年3月7日(金)〜9日(日)
近代美術/銀座 ~近代の美人画展~ に出展作品の販売につきまして
描きぶりと落款から大正3年から5年頃の作品と思われる。
袖を口元にやり微笑むその姿はなんとも言えず愛らしい。
この時分夢二は本妻のたまきと恋人の笠井彦乃の両方をモデルにしているが、顔付やこの「はじらい」具合からして年若い彦乃であろうか。
モチーフは、ふたりの出会いの鮮烈さを象徴しているように思われる。
赤と白のモザイク状の着物柄も女の可愛らしさを引き立てている。
「若葉にかへし唄女が 緑の髪に風薫る 柳の眉のながし目に―」と歌われる『岸の柳』は、大川端(隅田川河畔)の柳橋あたりの江戸情緒と夏の風物を描いた瑞々しく粋な長唄である。
作詩されたのは、太陽暦が採用された明治6年のため、旧暦で江戸風俗を写した最後の唄とも言われるが、はたして清方はそれを知っていたのだろうか。
振り袖を風になびかせ、小舟から流れる本所の景色を心なしか眩しそうに見送る佳人の視線は、過ぎ行く江戸風情へ清方が向ける思慕と憧憬とにどこか重なり合うように思われる。